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教材研究

 『学び合い』の実践者の方々は、「『学び合い』は教材研究は不要だが、教材研究をしたくなる」と言われます。と書きました。私の経験を通して説明します。

 ある小学校6年生の担任のクラスに行きました。年度末近くの平和の国日本を含む小学校社会科のです。課題はチャーミングな試験問題を創ろうです。この課題はこの単元の最初に与えています。今日はそれをみんなで話し合う場面です。

 「さあどうぞ」の後は、子ども達が勝手にグループ化し、話し合っています。話の内容は「ごく普通」の内容ですが、子ども達は盛り上がっています。凡庸な内容であっても、子ども達には楽しい関わります。個別に見るのではなく、クラス全体を見回していました。そのうち、あるグループの会話の声の波長が変わったのです。もの凄く盛り上がっているのです。しばらくすると、他グループからそこに偵察する子がいきます。その子達を含めて盛り上がります。やがて元グループに戻ると、そのグループが一気に活性化します。そこで、私は各グループの会話を聞きました。それによれば、「何故、戦争に女性が招集されなかったか?」という内容です。「え?」と思ったのですが、子ども達は盛り上がっています。

 ある男子は「男は強いから」と言うと、女子から「あんた私より弱いじゃない」と言われます。小学校高学年はそうですよね。ある男子は「男は女を守らなければならないから」と言うと、女子から「あんたに守られたくない」と言われます。その後の男女間の議論、そして、それより面白いのは男子同士、女子同士の会話に聞き惚れました。それなりにジェンダー関係の本は読んでいましたが、そこでの会話の方が、「はるかに」面白いし、触発されます。

 おそらく、『学び合い』実践者はこの経験はしているはずです。従来型授業では一生涯経験できない、子ども達が自分を高めてくれる経験。でしょ?

 たしかに常識のレベルを超える子どもは多くはありません。まあ、2割弱でしょう。そのごく一部のイノベーターがそれが出来ます。しかし、7割強のマジョリティはそれが良いことは分かります。そして、13.5%のアーリーアダプターは、それがOKと分かれば様々な発想をし始めます。

 家に帰ってから、調べました。何故、戦争に女性が招集されなかったかを調べました。これが結構奥深い。人類の家族関係において女性が中心の家族関係はあります(トッドを呼んでください)。雄が死んでも子孫は残せると思うかもしれませんが、ライオンや猿等の群れる種の場合は、雄が死ぬと、その雄の子どもは惨殺されるのです。時間を忘れるほど、数日集中できるほど奥深いのです。

 さて、このエピソードをゼミ生に語るときは、私が調べたことの蘊蓄は語りません。私が語るのは、子ども達はそのレベルのことを出来る存在であることを語るでしょう。私が小学校の教師だったら、君たちの先輩は「何故、戦争に女性が招集されなかったか?」という斬新な問いを考えられた。それを乗り越えろと言うでしょう。これがコックとグルメの違いなのです。

追伸 従来指導型の教師の中で力量のある教師は「思った通りになった」とは感じられても「凄い、ありがとう」とは思う機会は教師人生の中で何度有るでしょうか?そりゃむりです。子どもの行動を徹底的に予想し、コントロールすれば、驚きはない。しかし、『学び合い』の場合は、ちゃんと耳を澄ませば「凄い、ありがとう」を多く知ります。

 ただし、私のレベルになると「凄い」が当たり前になってしまいますが。