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2002-05-14

[]指導教官とゴタゴタを避ける方法 10:47 指導教官とゴタゴタを避ける方法 - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - 指導教官とゴタゴタを避ける方法 - 西川純のメモ 指導教官とゴタゴタを避ける方法 - 西川純のメモ のブックマークコメント

 以下は、超長文です。また、大学院生(及びOB)以外の方には意味不明だろうと思いますので、読み飛ばしてください。

私も上越教育大学に赴任して15年間たちました。その期間に、自研究室に所属された方、他研究室に所属された方を含めて、多くの院生さんに出会いました。15年の前半は助手時代でしたので、ある意味では外野意識で、内外の研究室を見ることが出来ました。また、私自身も20年弱前は院生でした。幸いに指導教官との相性はばっちしでした。しかし、友達の愚痴を聞くことは少なくありませんでした。その過程で、いろいろなゴタゴタを身近に見ることが出来、教官側の言い分、院生さんの言い分を両方聞くことが出来ました。さらに、以下の分析は、現在教官である私自身のみによる分析ではありません。私の場合は、身近な研究室にゴタゴタが起こると、当事者である指導教官院生さんから話を聞くことのみならず、近くにいる院生さんに話を聞きます。岡目八目、客観的な分析をしてくれます。下記は、他ならない院生さんの同級生の院生さんに対する分析なのです。

 独断と偏見院生さんを分類すると4つのタイプに分けることが出来ます。一つの次元は、指導教官と同じ夢を見るタイプと、見ないタイプ。もう一つの次元は、自分で研究を進められる院生と、進められない院生です。これで、2×2で4つのタイプとなります。

 自分で研究を進められる院生さんの場合、教官にからは「同じ夢を見るタイプ」と、「見ないタイプ」の違いがあまりわかりません。なんとなれば、自分で研究を進められるタイプの場合、指導教官を「うまい具合に」洗脳します。自分の夢を、あたかも指導教官の元々の夢のように誘導することが出来ます。自分で研究が進められる院生さんの場合、よほど指導教官が頑固で無能である場合を除き、あるレベル以上の研究が出来ます。

 問題は、自分で研究を進められない院生さんの場合です。このタイプ院生さんは、「同じ夢を見るタイプ」と「見ないタイプ」では大きく分かれます。ちなみに「自分で研究を進められない院生さん」は、無能であることを意味していません。現職院生さんの教師としての力量は十二分で、そのため、都道府県から派遣されています。しかし、こと「研究」に関しては玄人ではありません。現職経験10年の教師と新卒先生との違いは歴然です。初めて「研究」に触れる方が素人なのはごく当然です。

 「自分で研究を進められない院生さん」の中で「同じ夢を見るタイプ」の場合、指導教官が一定以上の能力を持つ場合、あるレベル以上の研究が出来ます。もし、指導教官の能力が一定レベル以下の場合、研究がうまくいかない場合があります。具体的には、指導教官の指導通りに研究を進めたのにもかかわらず、最後の最後になって「俺はそんな指導はしていない」と突き放される場合です。しかし、このタイプの事例か、否かは簡単に判別できます。このような事例の場合、その指導教官は常にこのような事態に陥りますので、過去の事例を調べればすぐに分かります。もし、過去の事例において指導関係破綻した事例が稀である場合は、院生さんの方にもゴタゴタの原因の多くはあります。

 大学院は「研究」をするところであり、大学教官は「研究」をするプロです(外のことに関しては子ども並みであっても、すくなくとも研究に関してのみはプロです)。現職の院生さんは実際に教えることに関しては、大学教官よりも遙かにプロです。しかし、そうであっても「研究」に関してはプロではありません。もちろん、先に述べた「自分で研究を進められるタイプ」も存在することは否定しませんが、ごく希です。不遜なもの言いのようにとらえられるかもしれませんが、想像してください。大学教官の中で現場の十年選手・二十年選手なみに、小学生中学生を教えられる人がどれだけいるでしょうか?経験の差は歴然とあります。

 「自分で研究を進められない院生さん」で、かつ、「同じ夢を見れられない」院生さんに、どのようなことが起こるかを教官の側から記述すると以下の通りです。院生さんの方から研究の進め方の案が出されます。しかし、方向性は必ずしも研究としてまとめられる方向ではありません。そこで指導教官の方が、研究としてまとめられるような提案をします。しかし、院生は拒否します(同じ夢を見られませんから)。この過程を繰り返すことになります。この過程を繰り返すと、指導教官の対応は二つに分かれます。

 第一は、「指導教官」という伝家の宝刀を抜いて、強制的に従わせます。それに従う場合は、あるレベル以上(しかし、かなり低めの)研究が出来ます。従わない場合は、大げんかになります。以前では研究室移動が不可能でしたので、結局、いやいやながらも従うことになります。しかし、現在のように研究室移動が可能の場合は、移動することになります。しかし、この場合は、同じ過程を繰り返すか、以下に述べるように指導教官が「研究」を求めないという状態に陥ります。

 指導教官の第二の対応は、言い合いに飽き飽きして、「それならやってみな」ということになります。心の中には、もしかしたら「自分の思いつかない視点で研究を進められるのかも出来ない」という希望を持つ場合があります。しかし、先に述べたように、そのような場合は例外中の例外です。圧倒的大多数の場合は、研究とは言えない、研究となります。その場合の指導教官の対応は二つです。「それは研究ではない」と明示することになります。大抵の場合は、大学院の後半(悪くすると修論作成の直前)です。院生さんの見方からすると、「それならやってみな」といわれたのですから、認められたと判断しています。そのため、「無責任だ!」、「指導してもらっていない!」となります。よくあるタイプのゴタゴタです。しかし、このゴタゴタに関して、その原因の多くが指導教官院生さんのどちらにあるかは、先に述べたようにその研究室過去の事例を調べれば簡単に分かります。

 しかし、「それならやってみな」ということで研究を進めた場合、全てがゴタゴタに陥るかというとそうでもありません。大抵の場合は、研究とは言えないレベル研究を、当人には研究と思わせたまま修了願うという対応があります。(ちなみに私にはとても出来ませんが・・・)。大抵の場合は、ご本人は気づきません。ある意味ハッピーエンドとなります。

 本ホームページメモは、他研究室院生さんも参照していると聞いています。本メモ院生さんにとって必ずしも愉快なメモではないことは十分了解しています。しかし、院生の先輩として、老婆心より書きました。ゴタゴタになりそうな院生の方、また、既になっている院生の方にとっては、教官は悪鬼羅刹のように思えるかもしれません。しかし、その教官が悪鬼羅刹のような方であるならば、過去においてゴタゴタ続きだったはずです。もし、過去の事例においてゴタゴタが希(もしくは皆無)であった場合、ゴタゴタの原因の多くの部分は自身にもあることをご理解ください。また、過去の事例においてゴタゴタが多かった場合、ちょっと調べれば分かることを調べなかったという非は、少なくともご自身にあります。また、「俺の考える研究のあり方は正しい」と確信している方もおられるかもしれません。しかし、もし自分で研究を進められるレベルの方であれば、指導教官を自由自在に洗脳できるはずです。そうでなければ、自分で研究を進められるレベルでないことを意味します。

 研究能力が教官を凌駕する院生さん(稀なケースですが)は、指導教官をおだて、あしらいながら、洗脳してください。そうでない場合は、少なくとも在学中は指導教官の言うことを正しいと信じてみることです。剣道守破離という言葉あります。つまり、守-形を守る段階(初心)、破-形を破る段階(達人)、離-形を離れる段階(名人)の段階で進むという教えです。その中の最初は、形を守る段階です。いきなり破り、離れることは出来ません。