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2003-09-02

[]本日のウルウル 10:30 本日のウルウル - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - 本日のウルウル - 西川純のメモ 本日のウルウル - 西川純のメモ のブックマークコメント

 我々の研究室が、意識的に子どもたちの相互作用に着目して研究し始めたのは平成9年からです。それからの蓄積から、かなりのことが分かってきました。不遜ながら、多くの先生方が悩んでいることに関して、一定の方向性を、データに基づき語るだけのレベルに達しました。今後も、それを発展する研究を進めたいと思っています。しかし、研究が進むにつれ、新たな壁が大きくなってきました。それは、我々の意識と、一般の先生方の意識の差の大きさが、大きすぎるようになりました。例えば、ごく初期の段階で明らかになった、子どもたちの話し合いの実態は、一般の先生方も気づかれている方は少なくありません。ところが、その研究の蓄積の上に立った研究、さらに、その上にたった研究、となると、「ほんまかいな~?」と感じさせてしまいます。例えば、「中学校1年生と3年生が一緒の教室で、一緒の勉強をする」、「私語を止めるのではなく、私語をさせるためにどうするかという研究」、「授業中の立ち歩きを禁止するのではなく、奨励するにはどうするかという研究」になると、奇をてらった研究に一見見えます。また、授業中に教師はニコニコしていて殆ど何も言わないのに、言っているときより授業成果が上がるという結論は、信じられないか、もしくは名人芸のなせる技のように感じさせます。しかし、我々の考え方を理解すれば理の当然ですし、ごくごく簡単に出来ます(少なくとも日本の過半数の先生方は出来ることです)。しかし、先に述べたように、我々の研究が進めば進ほど、そう感じさせることが困難になってきました。そのため、子どもたちの素晴らしさを明らかにする研究と共に、我々の考え方をより多くの先生方に理解していただくためにどうしたらいいかが重要な課題となってきました。

 前のメモに書いたように、本質的には、そのことを学ぶためには、優れた教師集団の中に入らなければ実現出来ません。でも、その優れた教師集団を育てるには、まず、最初の一人に気づいて貰わなければなりません。どうしたらいいか、ず~っと悩んでいました。でも、ある予想があります。それは、実際の授業実践を見て貰うことです。それを多くの先生方に見て貰うために、授業のプロトコルを本の形態にすることだと思います。それでは、どんな授業を見て貰うかと言えば、授業開きから、子どもたちが動き始めるまでの最初の数時間(最大でも10時間)が特に重要です。その時間の中で、子どもたちは教師の腹の中(子ども観、授業観)を見透かし、その教師の前での行動戦略を立てます。そこで子どもたちと、よりよい契約を結びさえすれば、あとは子どもがドンドンやれます。そのドンドンやる姿を見れば、教師の考え方もドンドン変わります。だから、この部分をちゃんと見て貰えば、我々が言っていることが荒唐無稽のことでもなく、また、極端な名人技でもなく、だれでもできること、でも考え方を変えないと出来ないことであることを理解して貰えます。

 別件で、昨年修了されたMさんの授業開きからの授業記録を手に入れました。本日は、ず~っと、それを見ていました。見ていて、ウルウルしてしまいました。「自分が偉そうに言っていることが、優れた教師の手にかかると、こうなるのか~!」と感激しました。でも同時に,このプロトコルを一般の先生方が見ると、私が見せたい部分とは違う部分を見るだろうな、と思います。Mさんの授業では、子どもたちをのらせるために、様々なテクニックが使われています。それは、声がけのレベルや、一つ一つの課題の順序、はては笑いを取る小話などなど・・。きっと、多くの先生方は、その部分に目がいくと思います。しかし、本当に見て欲しいのは、依存的な子どもの一言に対して、学習の主体者は自分自身だと言うことを考えさえる一言であり、自由にやらせている部分としめる部分のメリハリです。更に言えば、そのことをどのように言うかは重要ではなく、その一言を自然に言わせる子ども観、授業観なんです。だから、Mさんのプロトコルと共に、その中のどこに子ども観、授業観がかいま見えるのかを解説する必要があるでしょう。

 さらに、Mさんだけでなく、OB現役の方の授業記録も同様に見せる必要があるでしょう。それらを対比すると、ちょっと目に見えるテクニックのレベルは、人によって、また、扱う教科によって異なるため、一見すると共通性がないように見えるでしょう。でも、その中にかいま見られる子ども観、授業観は一致していること見えるはずです。つまり、やりかたは別々でも、考え方は同じであることが分かります。そのことから、テクニックが重要なのではなく、考え方が重要だと言うことが、かえって鮮明に見えるように思います。うちの研究室の進む道が、一つハッキリ見えるようになりました。

追伸 ということで、Oさん、Kさん、Iさんへ、上記のデータを出すことをよろしくお願いします。また、現職者の両Yさんも今から始まる実践研究で意識してね。なお、心優しきYさんを私の部屋に「ひったて」、上記に関して熱く語り、目標を与え、評価することを宣言しました。つまり簡単に言うと、Mさんのビデオを渡し、見て勉強し、そして私を感激させるデータを出すよう求めました。その方法は、やさしく、かつ、熱く語りながら、当人の良心に訴えかけることによって、逃げられない状況をつくるという、西川研究室の得意技である、人間関係で授業を展開するという方法です。Yさんをはじめ、皆さんよろしくお願いします。皆さんの研究によって、日本(いや大宇宙)の教育を変えましょう!