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2005-04-01

[]新年度にあたって 08:51 新年度にあたって - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - 新年度にあたって - 西川純のメモ 新年度にあたって - 西川純のメモ のブックマークコメント

 本年度は、この数年、静かに準備していたことが日の目を見ることになります。百里の道は九十里をもって半ばとなせと言われます。最後の最後まで知恵と手間をかけなければなりません。それらの多くは、日の目を見たとしても、その重大さが認識されるには数年かかるものだし、私が関わったと言うことは最後まで分からないと思います。しかし、そのいくつかは、日の目を見たとたんに、その意味が分かるし、それに私が関わっていることが明白になるはずです。それが怖い。今までは、偉い先生の陰に隠れていればよかった。しかし、来年度からはそうもいかなくなります。それが怖い。しかし、己の欲に根ざすのではなく、正しいと信ずる道、私が守りたい人のためだという確信があります。なんとしても踏ん張らなければならない。

 武田信玄が「勝負は、六分七分の勝は十分の勝也、八分の勝は危うし、九分十分の勝は味方大負けの下作り」と言っています。しかし、信玄は甲州一国の国主の世継ぎとして生を受けたという圧倒的な有利な出発点にもかかわらず、一生の間に得た国は駿河と信濃半国にすぎません。九分十分の 勝ちを目指して、かつ、大負けの危険性をさける努力を怠らなければ、七分八分以上の勝ちを得ることは出来ないのだと思います。まだまだ、攻撃的に、かつ、どん欲にいたいと思います。 だって、今年度に日の目を見ることなんて、それ以降に日の目を見ることに比べれば序章にすぎませんから。

[]デシ 08:51 デシ - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - デシ - 西川純のメモ デシ - 西川純のメモ のブックマークコメント

 ある方から教えられて、デシという研究者の「人を伸ばす力」というものを読みました。感激しました。心理学で感激したのは、大学院の時代にピアジェ・ブルーナー・オーズベル ・ガニエに感激し、大学に就職してから認知心理学に感激し、アドラー心理学に感激したのに続くものです。前半部分はページをめくるのがもどかしく感じるほどでした。我々の主張ときわめて近いものがあります。デシの研究は、ある先生の博士論文を読む過程で知り、面白かったので読んだことがあります。しかし、それらは研究書の性格が強いため、彼のフィロソフィーを読み取ることに失敗したようです。今度の本はフィロソフィーが前面に出ていました。また、彼が研究者であると同時に、すぐれた教師であるということを感じ、好きになりました。そして、彼の明らかにしたデータが、我々の主張の正しさを示すデータになりうることを知り、心強く感じました。

 しかし、後半部分から、我々との違いがはっきりするようになりました。それはアドラー心理学を学んだときに感じたことと全く同じです。一言で言うと、人を有能な存在とは信じ切っていない点が違います。そのため、やることが細かいんです。テクニックを否定しているんですが、私から見るとテクニックの段階にいるようです。そのため、実際の教育に適用するには、無理があります。また、多くの心理学と同じに、個人に重心が置かれています。集団の重要性を指摘しつつも、そこに例示される事例は、一人の指導者と個人との関係を述べるものが主です。一人の指導者と集団との関係、また、集団と個人との関係は、相対的に弱いようです。しかし、それらを割り引いても、優れた研究者であり、研究成果であることを感激しました。

 彼の研究をどのように取り込んでいくかは、しばらく時間がかかると思います。とりあえずは、我々の「自己判断・自己責任」の原則との関係を明らかにしたいと思います。また、我々は人(正確にはホモサピエンス)の能力を最大限に信じます。おそらく、我々以外のヒトからは予定調和的にすぎると批判されるような考え方を持っています。そのことをもう一度考えたいと思います。

追伸 Wさんへ。勉強もしない愚かな大学教師に知恵を授けていただき、感謝します。