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2008-01-04

[]社会科離れ 17:20 社会科離れ - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - 社会科離れ - 西川純のメモ 社会科離れ - 西川純のメモ のブックマークコメント

 「理科離れ」という言葉は一般的ですが、実は「社会科離れ」も深刻です。身近な学生さんと話してみると、理科に勝るとも劣らないほど社会科は大嫌いだといっていました。当然、社会科を大事に思っている先生方にとっては深刻な問題です。では、そのような先生方が考える「社会科離れ」の原因は何か、また、解決策は何かを調べてみました。すると、理科を大事に思っている先生方が考える、「理科離れ」の原因とその解決策と全く同じです。つまり、その道のエキスパートの人は、素人の人が何を悩んでいるかを理解できないという認知心理学の結果を証明するような分析をしています。つまり、エキスパートの人が考えるような小難しい原因ではなく、ようは分からないのです。

そして、その解決策は、面白くて・分かりやすい、教材・指導法です。最近はやりの「●●力」というネーミングをつけていますが、そのような言葉の虚飾をはぎ取れば、何の新鮮味もない精神論です。まるで、竹槍でアメリカ軍を撃退できるというようなものです。そんな教材・指導法で何とか出来るようなものであれば、百年前から解決できます。また、最近はやりの脳科学の分析は、私にとっては「最新理論に基づくダイエット法」と同じで、どっか眉唾物です。というのは、とても大事なところになると専門用語が出てきて、「そういうものだ」ということを納得させられます。素人ですが、脳科学が教育に関連づけられるとは、すみませんが私は思いません(理由は、次のメモに書きますので省略します)。

我々の分析によれば、社会科離れが起こるのは、小難しい理屈は不要で、ようは現状の社会科が壊滅的にひどい教え方をしているということにつきます。その原因を理解している私にとっては、現状の社会科で分かる子がいる、いや、嫌わない子がいる、ということの方が驚異的に思えます。あたかも中学校英語しか教えられていない生徒に、古英語のシェークスピアを教材に与え、それを理解せよと求めているようなものです。このあたりは、「社会科」(http://manabiai.g.hatena.ne.jp/jun24kawa/20071020)に書きました。

そして、解決策はたいていは社会科好きの人(つまり社会を大事にしている教師の人)が自分の過去を思い出して有効だった方法を子どもたちに適用しようとします。私は小学校、中学校、高校の社会科の全ての成績は「5」(現在だと10)以外とったことがありません。そして、一度もテスト勉強をしたことがありません。テスト勉強をせずに成績が良かった理由は本が大好きだったからです。小学校低学年、中学年では偉人伝を読みあさりましたし、高学年以降は「椿説弓張月」、「太平記」、「太閤記」、「水滸伝」、「三国志」、「戦争と平和」・・・・などを読みあさっていれば、覚えるつもりが無くてもたいていのテストの問題は解けます。社会科好きの人は私のような方は少なくないと思います。そのような人は、上記のような読み物を読むことを進めます。しかし、上記の読み物が面白いと思える人だったら、すでに読んでいるはずです。どうも我々は自分と違うタイプの人を想像するのが難しいようです。結局、一人一人の理解の仕方が違うことを前提とする『学び合い』しか解決するすべはないと思います。一人一人が現在最高のスーパーコンピューター以上のパターン認識能力と表現力を持った人間という最高の教材を駆使して、自分にあった学習を探すしかないのです。

現状の社会科を学ぶ子どもたちは可哀想すぎます。

[]脳科学 17:20 脳科学 - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - 脳科学 - 西川純のメモ 脳科学 - 西川純のメモ のブックマークコメント

 私は脳科学の素人です。しかし、素人考えからでも、それが教育に役に立たないことを、かなりの確信をもって断言できます。

 ガンの特効薬を開発すればノーベル賞がとれることは、おおかたの人が認めることだと思います。が、ガンに関してはかなり解明されています。ところが、脳は遙かに未知です。もし、学ぶという人間の最高の精神活動を脳のレベルで記述したり、予測できる確たる理論があるなら、ノーベル賞は与えられるはずです。さらに、それまでいかなくとも、それに近いレベルに達しているならば、ノーベル賞の下馬評には出るはずです。しかし、脳科学と人間の高度精神活動でノーベル賞の噂はないように思います。つまり、その程度ということです。

 私はかってICチップを半田ごてでつなげてコンピュータを作りました。現在のマザーボードを組み合わせて作るのとはレベルは違います。そして、どういう仕組みで1+1は2であることをコンピュータは計算でき、かけ算、割り算がどういう仕組みなのかを知っています。しかし、それと現実のコンピューター上のプログラムにはレベルが違いすぎます。ICチップは電気のON/OFFで考えます。しかし、それではプログラムを作るのが大変なのでアセンブラ言語というのが存在します。それらは、「Aという場所にある数を入れろ」、「Aという場所にある数とBという場所にある数を加算しAという場所に入れろ」というような単純な命令群です。しかし、それだとしてもON/OFFの羅列よりは遙かに分かりやすい。あとは、BIOSという入出力の取り決めがあり、どの場所に「00101111・・・・」と入れると、画面のどの場所の点が何色になるかという取り決めがあります。ICチップの専門家は上記のレベルぐらいしか知らないのです。まあ、どれだけの計算させると熱を発するかとか、通信のノイズはどのようなものかは知っていますが、その程度です。

 上記に述べたアセンブラ言語でプログラムを書くのは大変です。だから高級言語というのが存在します。例えば、「変数XとYというものがあり、それは整数を扱う。最初にキーボードで入力された数値をXに入れ・・・・」とうような言語です。私が最初に統計分析をしたのは、そのような言語でプログラムを作りました。ところが、そのような言語で、現在のウインドウズの画面で動いている単純な動きをプログラムしようとしたら、想像するだけで吐き気を催すほど大変です。だから、ウインドウズでゲームなどのプログラムを作る人は、高級言語でプログラムを作りません。プログラムの一群をまとめたモジュールがマイクロスフとで開発してあり、それを利用しています。そして、その一つのモジュールも超一流のスタッフ集団で開発しています。言うまでもなく、そのようなモジュールを利用したとしても、すばらしいソフトを制作するのは卓越した才能が必要です。

 本当はもっと複雑なのですが、ものすごく簡略化しても上記の通りです。さて、現実のIC技術者にウインドウズのプログラムに対して意見を求めたら、大笑いして、「そんなの分かるわけ無いよ」と言うはずです。素人が「でも、ウインドウズはコンピュータ上で動いているし、そのコンピュータはICで出来ているんでしょ」と言ったら、その技術者は上記のようなことを説明するでしょう。もし、IC技術者が「ウインドウズはコンピュータ上で動いているし、そのコンピュータはICで出来ているのだから、ICの基礎的知見はウインドウズのスフとを理解する基礎となる」とのたまったとしたら、それは素人をからかっているか、「詐欺」を働いているのだと思います。そして、その理由は、騙されたソフト会社から研究費をせしめようとしているのでしょう(まあ、騙されるソフト会社は皆無でしょうが)。

 「ウインドウズはコンピュータ上で動いているし、そのコンピュータはICで出来ているのだから、ICの基礎的知見はウインドウズのスフとを理解する基礎となる」という主張は、コンピュータを知らない人には、それなりの説得力を持つと思えますが、少しでも知っている人には噴飯ものです。同様に、「学習は脳で行われている。だから脳科学は学習を理解する基礎となる」という主張も同様です。私はかって失敗をしました(「基礎を学ぶ」http://manabiai.g.hatena.ne.jp/jun24kawa/20010331)。それ故、この手のことに関しては敏感です。