■ [大事なこと]伝記
当たり前のことであるが、伝記になる人は特別な人です。生まれたときはごく普通だった人(もしくは、普通だと見えた人)が特別な人になるには、特別なことがあるからです。特別なものだから面白い。私も小学生の頃、考古学者や科学者や数学者の偉人伝を読み、自分もこうありたいと夢想したものです。
教育の世界にも偉人があり、スターがいます。その人の足跡をたどり、自分を奮い立たせる本があります。そのような本が最近立て続けて出版されています。とても良いことだと思います。それによって、その人の一見バラバラに見えるものが一つにまとめ上げて理解することが出来ます。それによって、その人の一つ一つの実践を我が物にすることが出来る可能性が高まります。
しかし、同時に別な伝記もあって良いのでは無いかな、と思いました。それはごく普通の教師の伝記です。
言うまでも無く、日本の圧倒的大多数の教師は普通の教師です。特別な教師のやったことは、普通の教師には出来ません。少なくとも、それを十年続けることは超人的な意思の力がいります。採用後5年で多くの教師は本を買わなくなります。少なくとも採用前、採用直後よりはぐっと本を買わなくなります。理由は「自分は普通の教師だ」ということを自覚するからです。考古学者・科学者・数学者に夢想した小学生が、いつか現実的になるのと同じです。
では普通の教師は学ばなくて良いのでしょうか?特別な教師のたどった特別なことは学ばなくても大丈夫だと思います。しかし、それでも学ぶべきものが少なくないと思います。そして、残念ながら、その手の本が全くありません。
抜けはあるかもしれませんが、以下のようなものは全ての教師が学ぶべきことです。(順不同です)
●新規採用直後の生き方。例えば、掲示板の掲示の仕方なんて大学で教えてもらっていません。ところが採用直後から必要となります。また、大学生の時代と違って、周りにいるのは友達では無く同僚です。そんなとき、休日にどのように過ごしたら良いか。今まで2千円も出せば飲めたのに、1万円以上ののみ会に参加する意味は何か?二十歳以上も離れた同僚とどのようにつきあったら良いか・・・。
●貯金や保険をどれだけかけたら良いか。採用直後、先輩から掛け捨て保険と積立保険を併用すべきだと言われましたが、ピンと来ませんでした。退職間際の先生方は、若い教師にどのようにすべきかを思っているのでしょうか?
●中高の教師だったら、休日は部活指導に明け暮れて自分の時間が無くなります。どのようにして自分の時間を捻出するのか。
●大学時代つきあった彼女・彼氏とどのように結婚に至るのか。そのために学部4年での過ごし方。また、採用後に伴侶を探すとしたら、どのようにしたらいいのか。
●親との同居のメリットデメリット。
●私立学校から公立学校、公立学校から私立学校、また、他県の学校への異動のメリットデメリットと方法。
以上がぱっと思いつきます。こんなことに多くのページを費やしている教師の伝記って無いでしょ。
単一の職種としては、教師は日本で最も多くの人が就業している職業です。そして、他の公務員の職種に比べて特殊性が高い職種でもあります。そのため、上記に関して特殊なノウハウがあります。しかし、そんな本がありませんね。