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2014-05-09

[]良い子の反乱 21:33 良い子の反乱 - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - 良い子の反乱 - 西川純のメモ 良い子の反乱 - 西川純のメモ のブックマークコメント

 考えてみれば、今から三十年以上前に「良い子の反乱」の話を聞いたことがあります。私は大塚の筑波大学附属高校で教育実習しましたが、駒場の附属高校で実習した同期から面白い話を聞きました。それによれば、教育実習生の授業などは駒場の高校生にはチャンチャラおかしいレベルなのです。そのため、高校のレベルの授業をしようとすると拒否するのです。そして、同級生は卒業研究でやっている菌類の分類の話をすることになったそうです。

 情報端末は安くなります。ネット環境は整備されます。そして、世の中には時間が一杯ある元教師や、教員養成学部の学生がいます。そして、自分の研究成果を実際に実践し使いたいと持っている心理学者や教育学者がいるかもしれません。

 さて、その人たちが授業プログラムをネット上のチームで作成し、改良するのです。ま、ウィキペディアやリナックスの構築みたいなものです。ただし、一つでは無く、色々が並列に生まれるのです。

 授業の基本的な流れはどうしようかを議論するのです。ネット上で普段は動きますが、オフ会も盛んです。質問に対しての誤答パターンの分析があり、それに対してのプラスアルファーの課題は何かも計画されています。そして一ヶ月間の誤答履歴をもとに試験対策問題を作るのです。そして、教員養成系学部の学生さんがボランティアで個別支援をするのです。

 上記に関して技術的な障害はありません。いつでも出来ます。そして、それが成り立った後に、教材や指導法や話術で上記に勝てるでしょうか?無理です。もちろん、相手をする子どもが5人ぐらいならば上回る教師はいるでしょう。でも、三十人以上は大村はまでも無理です。

 そのような教材が溢れるようになった時、駒場高校の子どもの反応が一般化するのです。だって、授業の方が、「下手」であることが良い子にはハッキリ分かるのですから。

 さて、その時点で教材の深い理解、指導法、話術の職能がどれほと生きるでしょうか?すみません、生きません。だって、チームでやっているものに勝てるわけ無いですから。

 ということを、この前の授業の最後の三十分間語りました。

 ちなみに、その時点での『学び合い』はどうしたらいいでしょうか?

 そりゃ簡単です。その時点の最高のハード・ソフトのツールを自由に使わせて、「全員達成しない」とやればいいだけです。そうすれば、ありとあらゆるコンピュータソフトを超えた「人」というツールを使えますから。

[]発進 07:12 発進 - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - 発進 - 西川純のメモ 発進 - 西川純のメモ のブックマークコメント

 イノベーター・アーリーアダプターとアリーマジョリティ・レイトマジョリティの違いは、前者はリスクと努力を理解した上で高い効果を狙い、後者はいまよりはちょっと高い効果で満足するが確実性と簡易性を求めるところです。

 集団の全てがイノベーター・アーリーアダプターだったら、不安定で安全ではありません。集団の大部分がアリーマジョリティ・レイトマジョリティであることは大事です。でも、全員がアリーマジョリティ・レイトマジョリティであるならば、集団は緩慢に衰退します。一定の割合だけイノベーター・アーリーアダプターがいることにより、集団は変化に対応することが出来ます。両方とも大事です。

 西川研究室を選ぶ人は、明らかにイノベーター・アーリーアダプターです。しかし、様々です。誰にでも確実性と簡易性を求めるのは当然です。葛藤がある。だから、研究室の選択期間の3週間の中のどの時点で選ぶかと言うことで、イノベーター・アーリーアダプターとアリーマジョリティ・レイトマジョリティのどちらの度合いが強いのかが分かります。

 今回の8人の中に、その多様性が担保されている。だから、安定していると思います。

 西川研究室は完全無欠で『学び合い』で運営されています。だから、人数と多様性があればあるほど、安定して高い成果が期待出来る。今回、8人の人が入ってくれたのでそれが可能となります。

 それにしてもよくも8人の人が入ってくれたと思います。大学院生時代の私だったら絶対に選ばない。私は基本的にアリーマジョリティ・レイトマジョリティです。土台をしっかり固めてから、確実に積み上げるということをやります。『学び合い』は多くの人には荒唐無稽なことのように思われるかもしれませんが、私にとっては三十年間の研究生活の中でありとあらゆることをやり尽くした結果たどり着いたものであり、私が本で書いていることには全て学術・実践のデータに基づいているものです。

 しかし、新院生や新学部生はそれを知らない。それなのに西川研究室を選ぶということは、私とは違うイノベーター・アーリーアダプターなのだと思います。でも、彼らも『学び合い』の全体像をつかめていない。どれだけのハイスペックであるかを知らない。

 私はゼミ生に「君らは日本を変えることが出来る」と言います。でも、今の段階は荒唐無稽に聞こえるし、単なるレトリックだと思うと思います。当然です。でも、日本全国の同志と繋がることによって、日本を変えることが出来るという言葉の意味は、「自分一人で日本を変える」ではなく「みんなで日本を変える」という意味であることを実感するようになるでしょう。

 そして、『学び合い』を実践することによって、一人一人の子どもや教師がどのように変容するかを知れば「救う」、「一人も見捨てない」という言葉の意味を実感することが出来ます。それが集積されたものが「日本を変えることである」ということを学ぶでしょう。

 毎年、百人程度の人が日本全国から『学び合い』を学びに上越に来ます。そして、自分たちの連携校での実践を見せて、色々と話します。その人たちが地元に帰り、『学び合い』を始めたことを知れば、見も知らない子どもが「救われる」ことを実感出来ます。自分たちのごく普通にやっていること出来ることが、日本全国に影響を与えることが出来ることを実感します。

 一年もたてば、私が「日本を変える」と言っていることがレトリックでは無く、本気であることが分かります。

 そして二年目です。卒業し、修了したら西川研究室という集団を離れて、一人で職場の中で生きなければなりません。その中でどう生きるべきかを学ばなければなりません。それは、アリーマジョリティ・レイトマジョリティとどのようにして折り合いをつけるかです。それは支援校での実習を通して学ぶことが出来ます。もう一つは、職場の中でイノベーター・アーリーアダプターを見つけ、また、日本全国のイノベーター・アーリーアダプターと繋がることです。目前の課題と同時に、中長期の課題を設けることが自分を腐らせず、誇り高い人生を生きる術であることを学んで欲しい。

 これから新院生の個人ゼミです。内容は過去に西川研究室が出した本を読みながら、それに関する疑問を私に聞き、私が応えることによって、三十年間の時間を追体験してもらうのです。それによって『学び合い』のベースには膨大なデータの積み上げがあることを学ぶのです。2ヶ月程度はそれに費やします。

 ちなみに、これが終わると、「もう全ては明らかにされた」という感想をゼミ生は持ちます。毎年のことです。そりゃそうでしょう。多くのゼミ生が、多くの時間と、多くの手間をかけて明らかにしたものです。普通の生活をしている教師(ましてや学生)が思いつける程度のことは十年以前にやり尽くしています。だから、私は日本全国の人からの質問に脊椎反射で応えることが出来るのです。でも、課題は常にあります。それを理解するために9月からどっぷりと現場学校に入ります。

 ということで本日から新ゼミ生の始まりです。

追伸 昨日の新歓コンパの最後に「周りから我々がどう思われるかなんてどうでもいい、我々がどう思うかが重要だ」ととても不遜な檄を飛ばしました。でも、その次に「でも、周りと折り合いをつけてね」とも言いました。私には立場的にも性格的にも出来ないことですから。その面に関してゼミ生に頼ること「大」です。