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教育委員会が本気出したらスゴかった。

「教育委員会が本気出したらスゴかった。 ―コロナ禍に2週間でオンライン授業を実現した熊本市の奇跡ー」(https://amzn.to/376gbWX)を読みました。タイトルにあるようなことが出来たのは何故かを知りたかったのです。

 お読みになれば各自が判断されるでしょうが、私の判断は以下の通りだと思います。

 第一に、トップ(熊本市長、熊本市教育長)が最悪を想定して行動していた。何故出来たかと言えば、間違ったときに非難されることを恐れなかったから。大抵の人は、こうあって欲しいと願い、最悪は想定しません。だから、常に先手を取られる。

 第二に、トップがありとあらゆる規制を外した。何故出来たと言えば、それによって生じるであろう問題の責任を取る覚悟があったからです。小役人は責任を取りたくない。だから、多くの学校はインターネットに繋げないネットを構築します。

 以上2つの最大の理由は、トップがリスク評価をしたからだと思います。最悪を想定し外れたとしても、善意から発することなのですから非難は起こらないか、起こっても長続きしない。逆に甘い想定の結果、最悪が起こったら厳しい非難が起こります。何故、これほど簡単なことが分からないかと言えば、リスク評価をしていないからです。頭を使わず、「なんかあったら色々言われる」で思考停止しているのです。

 第三に、全ての学校、全ての教員に対して、やろうとしたときにやれるような環境は整えていますが、一律にやることを強いなかった。職員室は村社会です。何かを決めるとき多数決で決めません。全員の合意形成を大事にします。もし、一律を求めれば、やりたくない人が合意できるレベル、つまり、やらないという合意しか出来ないのです。やれる人がやり、その成果を広がるのがよい方法です。

 最後に、文部科学省を当てにしていない。本の中には文部科学省のことが殆ど書かれていません。それでいいのです。だって、クリステンセンが述べているように文部科学省のような巨大組織は持続的イノベーションは出来ても、破壊的イノベーションは出来ないのです。だから、やることはやらない人への免罪符を出すのです。文部科学省がオンライン授業に前向きになれないのは、現状の顧客(子ども、保護者、教師)の多くがオンライン授業を望んでいないからです。その顧客の希望に添わなければならないからです。

 実に読みやすく、痛快な本でした。