■ [大事なこと]同志の方へ
最近は、これからトライする方へのメモが多いですね。と、ある同志から指摘されました。そうですね。そこで、苦労の多い現在、実践している同志の方へのメモです。
小学校の先生は人口当たり0.34%、中学校の先生は0.22%、高校の先生は0.23%です。ニッパチ理論から言えば、その内の2割が革新者(確信者)になれば全体が動かせるのです。つまり、小学校に関しては人口当たり0.068%、以下、中学校は0.044%、高校は0.046%です。これを100万人当たりに換算すれば、680人、440人、460人に過ぎません。それぞれの都道府県の方は、これを元に換算して下さい。(自分の市町村に置き換えると、ビックリするほど少ない人数ですよ)
『学び合い』の意図的な研究・実践が始まったのは平成9年からです。しかし、当初は学術を中心としたものであり、広がりは西川ゼミ出身者を中心としたものでした。その方向性を変え、フォーラムを新潟で立ち上げたのは2005年8月です。参加者は44名でした。たった3年前です。それが、今年は山形、宮城、群馬、埼玉、新潟、長野、大阪、島根で開催されます。開催されたフォーラムに参加された方であれば、参加者の数、多様さを実感されていると思います。現在では北海道から沖縄までの48都道府県の殆どに、同志がいます。と、豪語できるようになりました。
「子どもたちが小学校から高校までの12年間、安心して学べる時間を確保し、その子が生涯を過ごせるコミュニティーを獲得できるに必要な人数」と、この数年における広がりの速度を比べれば、明るい展望が見えるのではないでしょうか?私が恐れるのは、広げることに重点を置き、『学び合い』が学び合いになる、その一点です。十人の誤解者を得ることより、一人の本当の理解者を得ることの方が大事です。一人の理解者が出来れば、二人で伝えることが出来ます。誤解者を生み出せば、誤解者の広める誤りを正すためにエネルギーを費やさねばなりません。
子どもとともに、正しく伝えましょう。皆さんには少なくとも数十人の教え子という同志がいるのです。
追伸 戦いはエネルギーの損失ですから。不必要な戦いは避けて下さいね。相手も数ある職業の中から教師を選んだ善意の人です。最終的には分かってくれます。ただ、今の我々には、その力がないだけです。結局、ホモサピエンスへの最強の説得方法は、「みんながやっている」ですから。あはははは
■ [大事なこと]どこが違うか
『学び合い』を実践して、同じ課題を与え、同じように任せたのに子どもの動きが違うことはよくあることです。究極的には神様の思し召し、星の動きによって決まるのかもしれません。が、一応、分析します。
少なくとも初期段階は簡単にできます。だからこそ信州大学の三崎先生や、本学の水落先生は出前授業で『学び合い』が出来るのです。もちろん、三崎先生・水落先生の授業能力は凄いことは当たり前ですが、仮に、そうであったとしてどんな学校の、どんな教科でも『学び合い』が実現できるのは、それは『学び合い』が実は簡単だからです。そしてお二人の凄さは、『学び合い』は簡単であることをよくご存じである点です。少なくとも、『学び合い』を1年以上実践した方なれば、他の学校段階の他の教科でも出前授業が出来ます。でも、一方で初期段階で悩む方も多いのも事実です。何故でしょう?
私がその段階の先生方の授業を直に見たり、ビデオを見ると、その原因は分かりやすいぐらいわかりやすい。
1) 学び合いと誤解している
世に多い、学び合いと同系列だと考えているために、机の配置、学び合う時間(学び合えない時間)、学び合う相手をこまめに指定しコントロールしています。これだと『学び合い』ではないので、その結果は今まで通りの子どもは沈滞し、教師にスポットライトが当たる活動になります。
2) 個を見て、集団を見られない
典型的な行動としては、駄目な子をしかりまくります。一方で、褒めることが少ない。褒めることによって、集団を動かそうとせずに、その子を褒めてしまいます。
3) 焦る
不安であると、行動に出ます。典型的なのは対処療法を雨あられとやり始めます。例えば、うるさいぐらいに可視可をします。また、個に対する対処療法をし始めます。しかし、あまりにも教師が動きすぎるので、『学び合い』のコアとなるべき子が混乱します。その結果、遊ぶ子が闊歩します。『学び合い』を1年以上続けると、焦る気持ちが大幅に減ります(0にはなりませんが・・)。
4) 考えない
「焦る」気持ちを抑えるために、何もしない人もいます。しかし、我々が控えるのは、細かいことを個に対応することです。一方、全体に対して、大事なこと(つまり人の道)を語ることは大事です。例えば、ある子が問題を起こしたとき、その問題が大きくなることを防ぐよりも、そのことを通して、クラス全体に人の道を語ることは常にやるべきことです。
5) 子どもたちの動かし方が下手
一斉指導のうまい先生は、『学び合い』をやっても違いが出ます。それは、子ども集団の動かし方がうまいからです。おだて、脅し、からかい、笑わす・・・、それらは『学び合い』においても、あれば有利なテクニックです。黙って隷属させる一斉指導では、それをしなくても子どもは隷属します。しかし、『学び合い』では子どもが自分の頭で考えなくてはいけません。だから、あると便利です。が、必須ではありません。
今までの授業分析では、授業がうまくいかなかった場合、「あの発問が・・」とか、「あの板書が・・」とかのレベルで語られます。もちろん、『学び合い』でもそういう場合はあります。しかし、『学び合い』では、それを引き起こした教師の心に結びつけて考えようと思います。ある日の授業の善し悪しは、その日の教師の行動の結果かもしれません。でも、クラス創りが出来ていれば、安定した結果を得ることが出来ます。そのクラス創りは教師の心のありようによって定まるからです。
追伸 出前授業で出来るのは初期段階間です。次の充実段階に進むに必要な「みんな」の徹底は、これはクラス担任・教科担任が数ヶ月をかけてのみ創り上げられる文化です。ここに担任のすごさ、大事さがあると思います。