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2010-12-14

[]理論と実践の往還 08:39 理論と実践の往還 - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - 理論と実践の往還 - 西川純のメモ 理論と実践の往還 - 西川純のメモ のブックマークコメント

 教育の世界では、理論と実践の往還ということが大事だといわれています。が、殆ど成されていないのが現状です。思い浮かべて下さい。実践家として著名な人が学術論文を書いたとか、研究者の学術の成果が実践の世界で参照されたとか。実践家として著名な方が大学にむかい入れられた例は少なくありません、しかし、実践家として迎え入れられたのであって研究者として迎え入れられた例は極めて希です。研究者の中で実践の世界で著名な方はおられます、が、残念ながら研究者としては引退してから実践の世界で活躍されている場合が多い。端的な例が、その実践を学術論文の形でまとめている例が極めて希です。

 残念ながら、学術も実践も互いに相手をバカにしている、という状態です。

 人類の歴史において最も人を殺した病気はマラリヤだそうです。その特効薬はキニーネです。この発見の過程が面白いと思います。マラリヤの薬を捜した医者が、ある呪術師の薬が有効であることを発見しました。その医者はその薬の原材料を一つ一つ有効性を試したそうです。その結果、その薬の原材料の数十種のうちで、有効だったのはキナの樹皮であり、その成分がキニーネだったそうです。つまり、その他の数十種の原材料は無意味でした。最終的に有効だったので、歴代の呪術師は残りの数十種の原料も有効だと誤解し続けたのだと思います。

 教育には理論と実践の往還は絶対に必要です。現実の教室では理論だけでは物事は進みません。その場その場で、運用が必要です。時には理論に反することを緊急避難的にしなければなりません。確かに運用や緊急避難は有効です。そうなると、それが大事だと理論と併存して蓄積されます。そんなことが増えていくと、何が根幹で何が運用や緊急避難なのか分からなくなります。そして、いつの間にか運用や緊急避難が基礎のように思ってしまい始めます。根幹がどれなのか分からなくなるので、軸がぶれてしまい、ある時に言っていることとやっていることと相矛盾することを多用します。

 学術の成果は、実践と違い、単純で純粋です。だからいいのです。それが実践と同じぐらいゴチャゴチャしていたら、学術というものの存在意義はない。だからこそ、実践で蓄積された様々な知恵を篩にかけて、根幹と運用・緊急避難に分けて整理することが出来ます。その根幹が実践において評価され、正しいか正しくないかを評価を受けるのです。

 理論と実践の往還を失った実践は、呪術師の薬のように、何が何だか分からないノウハウの蓄積に陥ります。理論と実践の往還を失った学術は、実践に無関係な教育研究になります。どちらも不幸なことだと思います。

[]落ち込まない方法 07:02 落ち込まない方法 - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - 落ち込まない方法 - 西川純のメモ 落ち込まない方法 - 西川純のメモ のブックマークコメント

 落ち込みやすいゼミ生に、落ち込みやすい私がアドバイスすることを書きます。

 まず、未来に繋がる計画を考え、少しずつでも進めましょう。直近のことで失敗すると、全てが駄目になりそうに感じてしまいます。でも、その失敗を補ってあまりある計画が進行していたら、「ま、しょうがない、次があるさ」と頭を切り換えることが出来ます。

 そして、その計画は出来るだけ多く、そして多様にすべきです。それらの計画が同じレベル、例えば自分のクラスの計画だけとか、自分の学校の計画だけとかだと、失敗すると一気に失敗すると言うことはあり得ます。それは危険すぎます。一つのかごに卵を全部入れる過ちです。相互に関連するが、レベルの違う計画を考えるのです。私の場合は、ゼミ生一人一人のこと、現在支援に入っている学校単位のこと、ゼミ全体としてのこと、それも学術に関してのことと実践のこと、そして全国の『学び合い』ネットワークのこと・・・、それぞれに2~7ぐらいの計画を進行しています。こんな状態で、全部がいっぺんに失敗するということはまずあり得ません。

 失敗し、落ち込んだら、そのことをいじくるのをやめるのです。そして、失敗の悔しさのエネルギーを、他の計画に注入します。そんなこんなをやってほとぼりが冷めると、失敗した原因が見えるし、次の一手が見えるものです。

 何事も、多種・多様に、そして、毎日の日常の積み上げが大事だ、とゼミ生には語ります。