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2011-06-04

[]学校に広めようとする人へ 08:58 学校に広めようとする人へ - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - 学校に広めようとする人へ - 西川純のメモ 学校に広めようとする人へ - 西川純のメモ のブックマークコメント

 過去に何度も書いたことですが、改めて書きます。

 第一に、学校レベルで伝えようとする場合、『学び合い』を目的としないで下さい。そうではなく、『学び合い』の達成しようとする願いである「一人も見捨てない」ということを目的として下さい。そして、それを具体的な評価方法を決めるのです。例えば、テストの最低点(もしくは何点以下の子どもの人数)にするのです、くれぐれも平均点では駄目です。おそらく、これを達成しようとするには『学び合い』以外では不可能です。

 『学び合い』を伝えようとすると、『学び合い』をやりたくない人は、積極的に問題を起こします。その多くは、以前からあった問題です。そして、それがおこった原因を『学び合い』に帰結し、伝えようとする人を責めるでしょう。それは実りはない。

 上記が成り立ったら、それを達成することを事実で証明するのです。でも、事実を突きつけても、分かりたくない人は、なんやかや理由付けをして自分を合理化するでしょう。しょうがないです。人間ですもの。深追いは禁物です。分かりたくない人をいじくるのは、非効率的ですし、危険です。でも、結果を見せれば分かろうとする人はいます。その人に伝えればいいです。

 『学び合い』の相性のいい人は分かります。授業中に笑いがあるクラスです。子どもの方からの「突っ込み」がある人です。それでいて、真顔で話すとクラスの大多数(からなずしも全員でなくても結構です)が頭を切り換えられます。

 他方、相性の悪い人は、授業中ずっとし~んとさせている人です。もう一つは、マシンガントークや小技で笑いのある授業を成り立たせている人です。両者の共通点は、子どもを信じられないのです。おそらく、後者の人はなかなか『学び合い』に取り組みませんし、取り組んでも直ぐに「な~んちゃって『学び合い』」に陥ります。

 やり始めて『学び合い』を直ぐに出来る人と悩みつつ会得する人がいます。前者の人を見つけるには部活・委員会活動でのその人の「結果」を知れば直ぐに分かります。なぜなら普通の公立学校でそれらで結果を出せるのは『学び合い』でやらねばならないからです。その人の場合は、教科学習でも同じだということがわかりさえすればいいからです。

 以前、私のゼミにKさんという中学校の先生が所属しました。Kさんは私が『学び合い』をやっているということは知りません。Kさんは理科教育の第一人者として学会で名が通っている人として私のゼミを所属しました。ところが、彼が所属することには、私は『学び合い』に完全シフトしてしまいました。半年間、色々と話したのですが、『学び合い』に対する拒否感は変わりません。ところが、疑いつつも実践しました。ところが、1週間後には、最高度のレベルで『学び合い』を実践し始めました。彼曰く、「私は前から『学び合い』を知っていました。」と言い出しのです。彼は中学校のバスケット部の顧問になりました。ところがバスケットを何も知りません。ところが、彼の部はあれよあれよという間に強くなり、県大会で優勝し、全国大会に出たのです。専門外のバスケットを指導して何故急に強くなったのかは長い間謎だったんです。しかし、『学び合い』を実践して、自分が無意識のうちに部活指導で『学び合い』をやっていたことに気づいたのです。彼は、バスケットが分からなかったので細かいことを教えられませんでしたし、教えませんでした。一方、それを目標設定や集団の凝縮力を高める声がけをしました。それを教科学習にやったのが『学び合い』であることに気づいたのです。だから、県大会優勝出来るチームを作れる実力があったのですから、最高度の『学び合い』が出来るのは当然です。

 さて、分かろうとする人に対しての伝え方にも注意があります。『学び合い』を広げようとすると多くの人、そして、広めようとする人自身も「方法」を広げようとしてしまいます。「『学び合い』は考え方であって、方法ではない」という短い言葉の意味を本当に分かるには時間が必要です。もちろん、考え方を語っても建前論としか思われません。方法と一対になって分かるものです。しかし、焦っていると方法だけ伝えてしまうのです。例えば、『学び合い』で子どもを褒めて価値づけして下さい、とあるとその子のそばで、その子にだけ聞こえる声で褒める人がいたとします。方法だけ伝えるのでしたら、「周りの子どもに聞こえるように褒めて下さい」とだけ語るでしょう。でも、それでは「考え方」が伝わりません。

 私だったら、以下のように語ります。

 「『学び合い』は個人にこだわらず、集団を動かします。先生は今○○さんを褒めましたよね。それは○○さんを動かそうとしたのですよね。でも、それは効率が悪い。もう少し大きめの声で褒めて下さい。我々は○○さんに語りかけているのではなく、クラスに語りかけているのです。○○さんの行動は価値あることだとクラスに語りかけるのです。こうすれば一人一人に語らなくても一発ですみます。さらに○○さんにとっても、個人的に褒められるより、公的に褒められた方が嬉しいですよね。では、あそこの○○さんに動きがあります。あの子を褒めてみて下さい。」と促します。

 その先生が大きめの声で褒める。再びその先生の近くに寄ります。

 「ほら、先生が褒めたら、あの子も、あの子も動き始めましたよね。一言で影響がクラス全体に広がるのです。では、今度はあの子を褒めましょう。その際、笑顔でね。緊張しているのは分かります。でも、クラスの子どもたちは、先生を見ているのです。先生の一挙手一投足が評価なのです。今、クラスは先生が価値付けした方向に動いています。喜んであげて下さい。スマイルです。」

 のように語るでしょう。そうすれば、クラスの子どもたちが動き始めます。やがて、クラスの中で手のかかる子どもが近くの子どもと相談し始めます。

 「ほら、○○さんが○○さんと一緒に勉強していますね。手のかかる子どもを動かす力は我々教師にはないのです。それは熱意とか、能力とかの問題ではなく、相性の問題です。相性なのですから、いかんともしがたい。でも、子どもたちの中には、○○さんと相性が良い子がいます。そっと近づいて、彼らの話を聞いて下さい。きっと先生はニコニコしたくなると思います。それが大事です。先生の笑顔で価値づけて下さい。」と語り、子どもの集団の有能性を語るでしょう。

 何でも同じですが、理解には膨大な対話が必要なのです。これをやるには合同クラスでの『学び合い』が有効です。