■ [お願い]携帯メール
親指でピコピコと携帯電話を打てる人を見ていると異星人のように思えます。私には出来ません。ということで私の連絡手段はコンピュータの電子メールなのです。その私に携帯メールで連絡をする方は少なくないのです。ところが困ったことが起こります。携帯電話はスパムメールを拒否するために、コンピューターメールを一律に拒否する設定をディフォルトになっていることが少なくないのです。このような方からのメールは受けることが出来ますが、私からの返信を送ることは出来ません。
もし、私に携帯メールで連絡する場合は、以上のことをご注意下さいね。
■ [大事なこと]結果が全て
『学び合い』を「教師が何もやっていない、手抜きの授業だ」等の誤解があり、攻撃があります。日本の教育の不易の部分を守っている先生方の当然の反応です。どうしたらいいか、結果を出すしかありません。
私の研究室運営は完全無欠の『学び合い』です。結果として、平均的な大学教師だったら自分で書くべきところを学生さんたちが書いています。あまり詳しく書くと差し障りがあるので控えますが、例えで言えば、要録や通信簿や県に出す書類を子ども達が書いているということだとお考え下さい。おそらく多くの同志はドン引きになっていると思います。が、西川ゼミではそれが普通になっているのです。(もちろん、最終的な責任は私が取ることを覚悟してですよ)
このことは身近な同僚には暗黙の内に知られていますし、事務の人も知っています。事務の人が「?」とビックリしても、学生が自分たちが西川ゼミの学生だと言うと、「あ、西川先生のところね」で納得してもらっています。
では、何故出来るか。それは、ありとあらゆる方面で抜群の実績を上げ続けているからです。それは学術でも実践でも、教育でも研究でもです。そして、それができるのは、結果を出す必要性を学生達にちゃんと説明しているからです。
一定以上の高校だったら結果とは受験成績です。それで結果を出せば、それに文句を言える人はいません。がんがんに結果を出しましょう。
もちろん、結果を出すまでは身を隠しコソコソしましょう。でも、結果を出し始めてもしばらくはコソコソしましょ。徐々に本性を出しましょう。
■ [大事なこと]したたか
私は苦労されている同志の方へ、「したたかに」という言葉を書きます。その意味を書きたいと思います。
ある若い人がいます。学生時代から『学び合い』に興味を持った人です。ある県の学校に採用されました。久しぶりにスカイプ(インターネットのテレビ電話)で繋がって話しました。馬鹿話をしばらくして、「『学び合い』やっている?」と聞きました。新規採用者ですので、「先生、何言っているんですか。出来るわけ無いでしょ」という反応が来るだろうと思っていました。と、こ、ろ、が、フルの『学び合い』を普通にやっているそうです。腰を抜かしました。私が「へ?管理職は何って言っているの?」と聞きました。その人は「管理職は『学び合い』をしていることに気づいていません」との返答です。これまた腰を抜かしました。何故?と聞いてみて納得しました。
その人は、従来指導型で授業をしたら書くであろう板書を書くのです。子ども達には「これを気にせずやって。先生が書きたいから書いているんだ」と言っているそうです。子ども達は板書を気にせず学び合います。
さて、廊下を通る管理職にはどう見えるでしょうか?子ども達は立ち歩いて相談しています。しかし、黒板にはしっかりと板書が成されているのです。そのため、従来指導型の授業をしっかりして、今は「たまたま」子ども達が相談してもよい時間なんだ、と解釈します。
私は「あんたは偉い。狸だね~。でも、誰も読まない板書を書くのはむなしくない?」と聞きました。その人は「それを書けば『学び合い』を出来るのですから、お安いご用ですよ」と事も無げに言いました。なお、もちろんしっかり見られる場面では、しっかりとした従来指導をやります。
私の言う「したたか」とはこのレベルのことを言います。
後に学長になった方から聞いた話です。「西川、偉くなる人の特徴はなんだか分かるか?偉くなる人は人の話をしっかりと聞くんだ。そして、それを無視するんだ」とのことです。これまた「したたか」の意味するものです。
全国の同志へ。したたかになりましょう。
■ [大事なこと]ホールプロダクト
今までにもホールプロダクトという言葉を何度も使いました。ちょっと説明します。
世の中には買えば直ぐにその良さを実感できるものというものがあります。例えばお菓子などが代表的です。お菓子は買って食べればその美味しさが分かります。しかし、買ってもその良さを直ぐにも実感できないものがあります。IT関係の製品が代表的です。その製品がいかに優秀であっても、わかりやすい取扱説明書が無ければ利用する人は一部の人ばかりになってしまいます。例えばiPhoneだって書店に取扱説明書がふんだんにあふれるまでは買う人は少ないですよね。『学び合い』もそうです。
ホールプロダクトとは、製品を売れるようにするための補助製品、サービスの一群を指します。これには4つあります。『学び合い』を例にしましょう。
コアプロダクト:製品そのものです。つまり『学び合い』です。
期待プロダクト:購入者が最低限使いたいと思っていることを確実に保証するための補助製品、サービスです。iPhoneでいえば、電話をかけられる、メールを出来る、少数のアプリを使えるための取扱説明書がそれにあたります。『学び合い』で言えば、とりあえず人間関係が著しく向上し、それなりに成績が上がる(少なくとも下がらない)がそれにあたります。具体的な製品は『学び合い』ステップアップにあたります。今までも私のホームページ上には様々な情報をアップしていました。しかし、安心で確実に最低限の成果を保証するにはどうするか、というポイントがなかなか分かりませんでした。しかし、今ではステップアップで提案している「週に1度から」がポイントだと確信しています。
拡張プロダクト:購入者が買ったらこんなこと出来るだろうな、出来たら良いな、ということを実現できる補助製品、サービスです。iPhoneには様々なアプリがあることは多くの人は知っています。しかし、それを使い切っているのはごく少数です。『学び合い』で言えば、教師同士の『学び合い』であり、学校レベルの『学び合い』がそれにあたります。 ただし、学校長や研究主任レベルの人にとっては期待プロダクトになります。
長らくお待たせしましたが、今年の春には出版します。これが成功するためには、個人の『学び合い』と同様に「週に1度」です。それを学校レベルでやればいいのです。そのほかにも色々なノウハウがあります。例えば、「無理にやらせず、コアメンバーを3人つくる」、「『学び合い』をテーマとせず、一人も見捨てない、をテーマにする。そして、それをテストの最低点で評価する」等があります。
ムーアはIT製品のようなものがキャズムを乗り越え売れるためには、大量購入者を納得させることが必要だと言っています。何故なら、一人の購入者を納得させられれば、一括購入してくれるからです。だから、今年の春を楽しみにしているのです。
理想プロダクト:購入者が予想していないようなことを実現するための補助製品、サービスです。このレベルのプロダクトまで備えるのはごくごく希でだと思います。なぜなら、このレベルに達するには「文化」と言われるまでのレベルに達しなければなりません。最近で言えば、携帯電話がインターネットと合体したとき、また、テレビがコマーシャルというものを生み出したときに文化になる運命を得ました。
『学び合い』で言えば地域コミュニティの再生がそれにあたります。少なくとも上越では単発ですが、その端緒となる試みを行っています。これを文化にするためには前段階の拡張プロダクトによって学校レベルの『学び合い』が一定数を超える必要があるでしょう。私はあと数年と見ています。そうなったら理想プロダクトに取りかかろうと思います。
長々書きましたが、何を書きたいのか。全国には学校レベル、地域レベルで『学び合い』を取り入れたいと考えている同志がいます。私が直接お会いした方もおられますし、そうで無い方も多くいることを知っています。その方々へのメッセージです。
今年の春をお待ち下さい。
■ [大事なこと]広げる
たまに「私は『学び合い』を広げることをするつもりはありません」という人がいます。非常に残念に思います。私としては『学び合い』を広げなくても良いけど、「一人も見捨てない」を広げて欲しいと願います。結局、それがあなたの願っていることを確実にすることだからと分かって欲しいと願っています。
おそらく『学び合い』を授業方法だと思うから生じる誤解なのだと思います。『学び合い』の本体は「一人も見捨てない」です。それを今のところ実現するための方法論はあります。それは影に過ぎません。しかし、それを影ではなく本体と誤解されているのです。
つまり、「私は『学び合い』を広げることをするつもりはありません」という言葉は私にとって「私は「一人も見捨てない」ということを広げることをするつもりはありません」と言っているのと同じなのです。もちろん、「一人も見捨てない」ことを実現するのは『学び合い』ばかりでないという反論もあるでしょう。でも、これまた『学び合い』を授業方法と誤解しているから出る反論です。
もし、現状の影である方法より「一人も見捨てない」ことを確実にする方法があるならば、私は直ぐにそれを採用します。事実、過去の私の本や論文をお読みになれば、15年前の方法と現状が違うことが分かるはずです。いや、数年前の方法とも違います。ただ、『学び合い』では子ども集団の能力を高く評価するという子ども観が一貫しているので、見た目に見えるビックリするような姿に幻惑されて、それを実現している方法の激変が見えにくいのだと思います。
ニュートンの古典力学はF=mαに尽きます。それを3次元に拡張し、微分・積分すれば殆ど全ての公式が引き出されます。『学び合い』は「一人も見捨てない」という願いと、人の能力で一番強力なのは何かという学校観をクラスから学校へ、学校から社会に拡張し、微分・積分すればありとあらゆるところに適用できます。おそらく適用できないのは夫婦間と親子間だけぐらいでしょう。それが授業方法と誤解されるのは残念です。
しかし、しょうが無いでしょうね。いきなり考え方を理解せよと言われてもそれは無理。だから、ホールプロダクトを提供しているのです。しかし、ホールプロダクトに書かれているのは授業方法なのですから。