■ [大事なこと]強み
『学び合い』の強みを感じることがあります。
一人一人の発信力、一人一人の人徳、それで言ったら私は中の下かもしれない、と落ち込みます。でも、私がその程度でも、私が願っていることを発信してくれる人、人を引きつける人徳のある方、これってもしかしたら『学び合い』が日本随一ではないか、と思い始めました。これに気づいたら、なんか気が楽になりました。
我々の納得させなければならないことは、単なるテクニックではなく、根源的な意識改革です。大変です。でも、いっしょにやってくれるひとが多い。
『学び合い』は、科学をモデルにして、それから外れないようにずっとモニターしていました。結果として、個人崇拝や、集団同床異夢にならないようになりました。結局、それが力になると思います。
私には同志がいます。
■ [大事なこと]シャワー
『学び合い』の初期はテクニック的でした。「自己モニター」というテクニックを開発しました。方法は簡単です。子どもたちが自分たちの話し合いの様子を5分間記録し、それを自分たちで見直すのです。全部でも15分程度。これを1回やれば話し合いが驚異的に改善します。考えてみてください。職員会議の際、馬鹿げたことを延々と喋る人がいますよね。その人は、自分の姿が客観的に見られないだけなのです。だから、職員会議の様子を記録し、みんなが一緒にそれを見直せば、恥ずかしさで二度とやりません。『学び合い』は学習者の能力を信じます。学び合うことが教えるべきものではなく、学習者の中に内在すると考えるからこそ開発できるテクニックです。
このテクニックを外部の人に試してみました。ところが見事に無効なのです。不思議に思ってビデオを見て分かりました。たしかに、その人はテクニックを使っています。でも、そのテクニックを使っていない黙って立っているときに、不安そうな様子をしているのです。そしてそれを子どもたちが見ていたのです。
分かってみれば、当たり前のことです。我々は意識的なことをしている時間より、無意識で行動をしている時間の方が圧倒的に長い。そして、その際も、ボディランゲージを雄弁に語っているのです。子どもはそのボディランゲージによって、その教師の「心」を見透かします。
『学び合い』は、そのボディランゲージを最大限に使っています。でも、そのボディランゲージを最大限に有効に使うためには、二つのことが大事です。第一は、見透かされる「心」が子どもを動かすにたるものであるか、ということです。では、「心」を高めるにはどうしたらいいでしょうか?滝に打たれ、十日間の絶食をするべきなのでしょうか?『学び合い』は「一人も見捨てたくない」と願い、「多様な人とおりあいをつけて自らの課題を解決できるようになること、その仲間を創ることが学校教育の意味」、「学習者集団は有能である」という二つのことを理解さえすればいいと考えています。
もう一つは、教師や子どもが規制された場ではボディランゲージは有効ではありません。『学び合い』では教師も子どももフリーな状態です。だから有効なのです。
そのため、立っているだけで、賞賛と叱責のメッセージをシャワーのように全員に発することが出来ます。フリーの状態だから、子どもたちのことを見ることが出来ます。見れば、自ずとボディランゲージを発します。評価とは見ることなのです。
無言だからこそ、教師の発するボディランゲージを、子どもたち一人一人が自分に置き換えて解釈することが出来ます。説明的な言葉にすれば解釈が狭まってしまう。禅宗の公案のようなものです。
なんのことはありません。野球チームやサッカーチーム等の監督をやっている方だったらお分かりのはずです。そこに立っているだけで、集団をどれだけ動かせるかを。『学び合い』はそれを洗練し、徹底し、教科学習でも有効なことを明らかにしただけです。