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 私は高校教師時代、教え子を猫かわいがりしました。高い高いしました。頬ずりしました。抱っこしました。男子にはベロベロなめました。

 教師になり、担任になったとき、教え子がこんなに可愛く思うなんて分かりませんでした。それまでの私は人間関係ではクールでしたから。でも、教え子がどんどん私に間合いを詰め、私を必要としている姿を見れば、可愛いのです。私に抱っこされ、高い高いをされるために列を作りました。ベロベロなめることを予想しているのに、並ぶのです。逆に、なめないと拗ねます。私の人生で、これほどまで人に好かれた経験はありません。

 変ですよね。変だと、今は理解しています。でも、初任の青春ドラマにどっぷりの教師のバカだと思って下さい。

 大学に異動し、上司の教授からは「研究すればいい」と言われました。論文を書きました。でも、楽しくない。教え子のかわいさを知った後では無意味です。大学に異動してから3,4年は毎日酒を飲み自己憐憫をしていました。なんで大学に異動したのかを泣きました。

 数年たって、助手として指導の補助をしました。が、実質は私が指導しました。可愛い。それは私より年上でも。

 やがて助教授になり、独立した研究室を建てました。高校と違って、私を選んだ人です。可愛い。その人達を守れる自分になるため、すべきことをして、結果をしました。若い頃、私の力のなさからゼミ生を守り切れなかった。強くなろうと思いました。

 結果を出し、私と潰そうとする人をねじ伏せ、教授になりました。それからはゼミ生を守りやすかった。そして、その後も、強くなるように努めました。

 本日、学部ゼミ生から教員採用試験に合格したことを聞きました。その時に思った感情は3つです。心理的感情の順番です。

 第一は、「あ~、この子ともあと半年だな」というエゴイズム。

 第二は、受かったんだな、おめでとう。

 第三は、これで、この子の幸せを考える責務から解放されるな。

 本当は、第二だけでいいのに。業です。