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対処

 公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(給特法)の第1条には「この法律は、公立の義務教育諸学校等の教育職員の職務と勤務態様の特殊性に基づき、その給与その他の勤務条件について特例を定めるものとする。」とあります。しかし、特殊性はどこにあるのかの説明はありません。一般的には、教育職員の仕事は、「自発性」や「創造性」が必要とされ、正解や上限がない特殊な仕事といわれます。

 しかし、この特殊性の主張は論理的に破綻しています。

 第一に、この法律は公立の義務教育諸学校等の教育職員に適用される法律である点です。私立学校の教職員は「自発性」や「創造性」が必要ないと主張するのでしょうか?そもそも、「自発性」や「創造性」が必要とされない仕事があるのでしょうか?公立の教職員以外の仕事においても「自発性」や「創造性」が必要とされており、その労務管理は労働法によって管理されています。何故、公立の教職員を除外できるのでしょうか?

 論理的に破綻している第二点は、4%としている点です。これは昭和41年の文部省が実施した「教員勤務状況調査」の結果、小中学校の教員の1週間の平均超過勤務が1時間48分だったことにより4%となっています。現在、上げることが検討されていますが、それ以前に調査に基づき数が定まっている点がおかしいのです。何故なら、調査によって水準が定められると考えるならば、個々人の勤務実態に基づき、労働法に基づく労務管理をすれば良いだけのことです。「教員勤務状況調査」の正しい結果は、「測定できない」のはずです。

 私の大学院の指導教官は文部省の教科調査官でした。その方から教えてもらったことです。学習指導要領である実験を必須にしようとするとき、官僚はその実験に必要な機器の整備状況を調査し、不足分の購入費を財務当局に事前に相談し了解が得られたとき、学習指導要領にその実験を必須にすることをしているのです。つまり、官僚は事前に財務当局と調整しているはずです。給特法の改定における%は委員の議論によって定まるのではなく、財務当局の指示によって定まり、その方向で官僚が誘導しているのです。

 教職員は最も人数の多い公務員です。自衛隊より多い。その公務員が一般と同じく残業手当をもらえるようになったら、どれほどの金額になるかを分からない財務官僚はいません。だから、給特法の改訂において、根本を変えることは出来ないのです。つまり、文部科学省に期待するのはやめましょう。まあ、上げていただけるなら、ありがたくいただきましょう。そして、勤務時間が終わったら、即帰りましょう。日本は先進国の中で飛び抜けて労働生産性の低い国です。残業したって、たいして子どものためになりません。勤務時間内に書類が作成できなかったら、「出来ませんでした」と言えば良いのです。何度も申しましたが、職務命令に反することは懲戒の対象になりますが、「出来ない」ことは懲戒の対象とはなりません。そして、職務命令は法に規定される必要があります。学校教育法を熟読してください。一般の教員は、勤務時間内に授業をして、要録を作成していれば懲戒の対象とはなりません。以前、学習プリントの添削が出来ず、ため込んでしまった教諭が懲戒の対象となりましたが、それは添削をしなかったことが問題ではなく、子どもたちに返却しなかったことが問題なのです。添削せずに正答一覧のプリントを添付し返却すればいいのです。

 極論であることは了解しています。ただ、ここまで出来ることを理解した上で、それぞれの方が、勤務時間が終わったら帰る手立てを考えましょう。当然、今の学校は成り立たなくなります。成り立たなくなったとき、はじめて管理者はなんとかしようとします。とりあえず成り立つうちは、申し訳程度の改善はしますが、改革はしません。

追伸 長時間勤務をしたのにそれにみあった金額を得られないという訴えは確実に敗訴になる理由を書きました( https://www.jun24kawa.com/entry/2022/12/04/155936 )。金払えではなく、特殊性を論拠として公立の教職員が労働法から除外されているのは、権利の侵害だ、と訴えたらどうなるのでしょうか?興味深い。