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2005-07-04

[]何故学び合わないか 11:27 何故学び合わないか - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - 何故学び合わないか - 西川純のメモ 何故学び合わないか - 西川純のメモ のブックマークコメント

 仕事にちょと合間が出来ました。そこで、この前のメモの補足をすることにしました。

 学び合いを研究している私が、必ずしも学び合っている範囲は広くはありません。その理由を冷静に分析しました。以前のメモにも書いたように、学び合うことによって得ることより、失うことが多いからです。その理由は、メンバーが目指していることが必ずしも一致していないからです。そのため、何をやるにも一人でやるより手続きがかかり、時間がかかります。さらに、一人でやるよりパフォーマンスが落ちます。想像してください。あなたが学校によかれと思っていることを、別な人が悪しかれと思ったとしたら。必ずしも、どちらが正しく、どちらが間違っているというものではありません。おそらく、どちらの方法でも良い方向になる可能性があると思います。しかし、限られた資源を配分するとしたら、それらの優先順序を決めなければなりません。それをメンバー内で議論で決めると言うことは時間がかかります。仮に議論で決まったとしましょう(かなり難しいと思いますが)。大学は、良かれ悪しかれ自由な社会です。決まったことに関して、参加するか、否かは、メンバーの自主性に任されています。最悪、時間をかけて決めたとしても、それに対して協力を得られないんです。大学が二分されているなら、まだ、単純ですが、一人一人がバラバラだと、さらに状況は悪いです。

 さらに状況を悪化させる条件があります。それは、大学の教職員は、同じパイを競争しているです。具体的には、大学が保有するお金とスペースを奪い合っています。企業の場合は、その集団の外にある資源を獲得できます。公立学校の場合は大学に近い状況ですが、大学の場合は自分の給料に反映されるのですからシビアです。そして、大学においてそのような競争的な関係がない場合、パフォーマンスが落ちるのは過去の歴史が証明しています。

 このような条件では、仮に議論しても、自分の利害がかかった論に固執するのは当然です。また、議論で破れた後も、その論に固執するのも当然です。それ故、管理職でもない私が出来る戦略は、同じ方向を向いている人と小さな集団をつくり、そこでパフォーマンスを上げ、実績で論の正しさを証明するしかありません。

 つまり、私の大学における経験から言って、「集団に目標が一致させる」、「互いの利害がぶつからない(具体的には競争的な関係をつくらない)」ことが学び合いを成功させるポイントだと思います。

[]学び合う職員室 11:27 学び合う職員室 - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - 学び合う職員室 - 西川純のメモ 学び合う職員室 - 西川純のメモ のブックマークコメント

 この夏休みに講演に行く学校から、問い合わせが来ました。内容は、「先生(つまり私)の講演前に、全職員が本(我々の研究室の本)を読み合おうとしようと思っているが、どの本を選んだらいいか?」というものです。そこで、「一つの本を全員で読むのではなく、職員がいくつかのグループを形成し、読む本を分担します。そして、それぞれの分担した本の内容を、他の職員に発表する」という形式を提案しました。この方法ならば、他のメンバーから質問を受けるでしょう。それに答えなければなりません。そのため、人任せに出来ません。人任せに出来ない人たちが集まって議論するのですから、議論の質も高くなると思います。つまり、ジグソー法に近い方法です。その中で、何が分からないかが煮詰まります。そこを中心にして私が講演すれば、かなり質の高い講演が出来るはずです。

 と思って言った後に、「馬鹿だな~」と思いました。何故かといえば、方法に介入しすぎています。上記の方法は良い方法の一つではあるとは思いますが、全職員にとって良い方法とは限りません。数十人の教職員ならば、私なんぞが思いつくレベルのことは直ぐに思いつくだろうし、私が思いつきもしないような素晴らしい方法を考えられるはずです。それではどうしたらいいか?やはり目標のレベルです。具体的には、このように語るべきなのでしょう。

 『我々の研究室の研究成果は膨大です。それらは密接に絡み合っています。出来れば、それらを全て読んでいただき、その中で、何が分からないかを詰めていただければと思います。もう一つお願いがあります。特定の職員の方だけが理解したとしても、その力は限られたものです。職員集団が同じ方向性を持つことによって、その力は十倍にも、百倍にもなります。つまり、私が望むのは、全職員が我々の研究室の考え方の全貌を理解してもらいたいということです。大変多くのことを求めていることは了解しています。しかし、それが実現したならば、皆さん一人一人が多くのことを得られることはご理解いただけることだと思います。さて、どのようにしたらいいか?先の目標を皆さんが達する方法は、皆さんをなんにも知らない私に考え出せるわけありません。それが出来るのは皆さんだけです。私はそれが出来ることを疑いません。私は皆さんがどんな方法を考えるか、期待しています!この「出来るはずだ」という信頼を子どもに持てること、それが我々の考え方の根幹にあります。そして、この期待に対して、教師の予想を遙かに超えた次元で子どもたちが応えてくれることを喜ぶのが、我々の考える教師の本当の喜びです。』

 これが我々的な回答であると思います。(でしょ?Kさん)