■ [大事なこと]教師改造計画(その3)
我々の同志から以下のような「教師改造計画(メモ)を拝見して」というメールを頂きました。
『教師改造計画こそが、3日で教師を学び合いにさせる方法の解答であると理解しました。私の研究の一つである教師の力量を高めるために、やる気のある先生に集まってサークル活動を始めたわけです。次回に、3時間も取ってしまったので、私の実践を見せます。「やってね」で始まり「よくできたね」で終わる授業で、後は子どもがやってくれるでしょう。初任だろうが、10年選手だろうが、学び合いを理解できれば学び合いができるとは思います。しかし、真の学び合いにするには、「目標」を教師がきちんと考え、設定しなければ成立しないと思います。また、単元のデザインをしなければなりません。ここに本来の教師の力量が出てくるように思います。特に本時の授業の目標は、現場では課題とか問題といわれている部分ですが、力量そのものだと思います。この設定こそ、教師が問われる部分です。学び合いそのものもこの目標によって、変わると思われます。以前の目標で、かっては1ヶ月2ヶ月かかるであろう学び合い、異年齢の○○さんの学び合いが引き合いに出されましたが、学級という集団内においては、私の実践では、入学したての1年生であっても、最初の授業で成立させています。それは、目標の設定が今の子どもにあっているからだと思います。おもしろいことに、同じ目標設定で、学び合いをしたいという先生にやってもらったところ、子どもが学びあうことを実感したという方もいました。この目標設定の能力こそ、教師力量になると思われます。
話を戻します。メモにあるように3日間教え込んでも、その教師が設計する新単元の目標設定をその教師ができなければ、学び合いそのものは成立できないように思われますが、いかがなものでしょうか。』
私の返信は以下の通りです。
『まさに、その通りだと思います。でも、第一に言わねばならないのは、「目標」を考えるために最も必要なことは、教材の力のようなものではなく、「子どもを信じる」ということだと思います。それさえあれば、「教科書の何頁の問題を全部解けるようせよ」とか「この物語の中にある○○が、何故、○○しかたを考える上で、重要な部分はどこかを示せ」のように、ひねりの全くない目標を与えるだけでもかなりのレベルまで実現出来ます。私がメモの書いた3日で教師を変えることが出来ると書いたのは、このレベルです。
しかし、○○さんが書かれているように、その先があります。では、その先を成り立たせているものは何でしょう?おそらく、教材の力、あたりが一般的だと思います。しかし、私はその立場には立ちません。だって、それが正しいとしたら、小学校の先生は事実上不可能です。小学校の先生は全科担当です。それら全ての教材の力を求めるのは物理的に無理です。さらに言えば、中学校、高校の先生だって無理です。私は中学校、高校の免許状をもっています。しかし、コンクリートと石の違いは分かりますが、安山岩と玄武岩の違いなんて分かりません。専門の生物学ですらそうです。私は動物の生物物理学を専攻したので、そのあたりの知識はある程度あると思いますが、植物分類に関しては壊滅的です。野山を歩くと、物理学を専攻されたT先生に呆れられます。私は教材の力がある人だから出来る目標の建て方があることを否定しません。(ただし、認知心理学の自動化からいえば、かなり疑わしい部分もありますが・・・)でも、同じように音楽が得意な先生だから出来る目標の建て方、植物学が得意な先生だから出来る目標の建て方があるべきだと思います。
では、どのような力量がもっとも重要かと言えば、過去にも話したと思いますが、二つです。第一の力量は、子どもの反応に敏感で、子どもをバカにしないことです。これがなければ成長が起こりません。しかし、これだけでは不十分です。だって、自分一人の力なんぞは、たかがしれています。第二の力量は、同僚と繋がり、そのサポートを受けられる能力です。
さて、学び合いの授業を出来ることと、上記との関係はどうでしょう。○○さん自身も言っていたし、歴代のOBが言っていたことですが、学び合いの授業では、教師は子どもを見ることが可能となります。そして、今まで「勉強しない奴」と思っていた子どもは、そのこなりに勉強することに気づきます。従って、第一の力量を高めるにとても良いと思います。
さらに、子どもの姿を通して、自らの職場でも学び合いのネットワークの重要性を感じるでしょう。そして、学び合いがどんどん活性化したら、子ども達の要求に応えるためには、他の教師と繋がる必然性が生じます。つまり脱学級王国しなければなりません。従って、第二の力量を高めるにはとても良いと思います。
おそらく、本時の目標の設定を建てるレベルだったら、直ぐに出来ます。ところが、本当に難しいのは、子ども達の中に問題が生じたり、教師同士の問題が生じたりのように、人間関係の問題が生じたとき、どのような目標を設定することだと思います。そこには万能の処方箋があるわけではありません。でも、その処方箋を作り上げるには、どのような基本方針が大事であるかは、我々は分かっていると思います。それは、学び合うということ、そして、個に対応するのではなく、その個を含めた集団としてとらえるということです。そして、それは○○さん自身が、現場で既にずっとやっていることです。
これが私なりの応えです。
今は、理科の授業改善のためのサークルかも知れません。でも、それは直ぐに、次のステージに進むはずです。○○さんなら、それが出来ると確信しています。
期待していますよ。』