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2013-05-18

[]分からない 15:49 分からない - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - 分からない - 西川純のメモ 分からない - 西川純のメモ のブックマークコメント

 認知心理学の自動化という現状は『学び合い』の理論的背景の一つです。それによれば、分かれば分かるほど分からない人の気持ちも理解も分からなくなるのです。そのため私は『学び合い』が分からない人の気持ちも理解も分からなくなっています。私にとっては、『学び合い』の方が従来型指導より優れていることは自明です。が、多くの人に分かってもらえません。それが理解できないのです。

 知りたいのですが、そこのあたりを議論すると大抵は感情論に陥るのです。論理的に議論すれば数学の証明のように証明できるのですが、途中の段階で思考停止になります。

 昨日は新M1と『学び合い』が優れていることを説明している段階で、この現象が起こったのです。つまり、私が一つ一つの自明な事実を積み上げて証明しようとするのですが、あるところで「分かりません」と止まってしまいます。おそらく歴代の新ゼミ生の多くは同じような気持ちだったのでしょう。でも、分かったような「ふり」をしていたのだと思います。でも、そのゼミ生は生分かりをせずに分からないと言ってくれたのです。

 そこで、既に『学び合い』を理解しているゼミ生が彼の気持ちと理解を私に説明してくれたのです。その説明が実に分かりやすかったのです。

 あるゼミ生が言いました。

 『子どもが外で他の子どもとケンカしていたとき、親の中には「ほら、もう一度やってこい」という風に子ども達の中で問題解決しようとする親がいます。でも、それを見ていて親としての役目を放棄している。ちゃんと子どものケンカの解決をするように親が色々なことをすべきだという親もいるでしょ。』

 この説明がストンと私の心に落ちたのです。子育てにおいて、私は完全に後者だからです。そして、順当な理解は「子どもに任せるべきところもあるし、親がしっかりと解決するべきところもある」というAもBも両方ありというところだと思います。

 多くの場合、良い方法が複数あった場合、状況に合わせてそれらを組み合わせた方が良いというのが一般的です。しかし、それが成り立つには交互作用、つまり一方が他方に影響を与えない場合、また、与えたとしても「正」の効果がある場合にのみなりたつのです。一方が他方に悪い影響を与える場合は、両方ともという戦略は、一方のみより効果が下がります。何度も書いている「足して二で割る『学び合い』は従来指導型『学び合い』より効果が下がる」という減少に繋がるのです。

 しかし、これが分かるためには『学び合い』を授業方法レベルで理解するのみではなく、それがなぜ有効に働くのかという理論的な理解に至らなければなりません。でも、初心者にそれを求めるのは「剣の道は心だ」と言うと同じような意味不明なことでしょう。だから、今のところ週1の『学び合い』ということを提案しているのです。つまり、1時間の中で「足して二で割る」のではなく、純粋な『学び合い』と純粋な従来指導型を1週間の中で「足す」のです。

 さて、分からない人の気持ちが納得できると、逆に、なぜ自分が一般の人からは理解不能の『学び合い』に至ったかが分からなくなりました。そこで新ゼミ生に私が高校教師だった頃から今に至るまでの過程をざっと話し始めました。そうすると別のゼミ生が、「今までの話の中で、一番、彼が納得できる説明だと思います」と言ってくれました。なるほど、と思いました。

 そこで、しばらく時間をかけてライフヒストリーを書こうと思いました。つまり、ごく普通だった私が、多くの人からは「宇宙人を見た」と言っているように見られる人になったのかを順序を追って説明しようと思いました。