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2003-02-13

[]人の良いヤブ医者 17:09 人の良いヤブ医者 - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - 人の良いヤブ医者 - 西川純のメモ 人の良いヤブ医者 - 西川純のメモ のブックマークコメント

 このところメモ更新が滞りがちです。理由は個人的な仕事、定常的な業務に加え、独立法人化へ向けての取り組みの仕事があるからです。

 バカみたいな話です。他大学では数年前から具体的に計画を進めているにもかかわらず、本学は、ことしの11月までには殆ど具体的な作業を行っていません(本学は「○○対策室」、「○○ワーキング」という組織を作っただけで安心してしまいます。よくあるでしょ、受験参考書をやたら買い込んで、机の上に積積みあげるだけで安心する受験生。)。さらに、年末年始があり、学長選挙があったため2月まで殆ど何もない状態です。それで3月に文部科学省ヒアリングに行こうというんだから、ビックリもんです。結果として、次期学長リーダーシップを発揮し、いままでの帳尻合わせをしている状態です。

 その仕事の中で、色々とシミュレーションをします。独立法人化になれば、遅い・早いの違いはあっても、大学競争環境の中におかれます。もちろん、旧帝国大学などでは学内における競争環境現在でも熾烈です。しかし、多くのその他大学、特に教員養成系大学・学部では、そのような競争関係は殆どありません。年功序列、平等主義が一般的です。穏やかな大学人の社会が成立していました。まるで田舎の生活のようです。その中で、無能ではあっても人間的に良い先生が、人に迷惑をかけない程度に、趣味的な研究を続けることが出来ます。しかし、そのような先生は、周りの教師や学生さんに、何とも言えない、良い雰囲気を与えてくれます。しかし、一方、そのような社会を悪用し、暴走してしまう場合も少なくなく、結局、独法化になってしまったのだと思います。

 幸い、教員養成系大学において求められる最大の能力は、人との繋がりです。したがって「いい人」は競争環境の中でも生き残る可能性は高いと思われます。しかし、両者の相関関係は1対1対応ではありません。ちょっと目には分からない「いい人」もいますし、「いい人」を演じられる人もいます。リンカーンは「多数の人間を永久に騙すことはできない。」といっています。しかし一方、「少数の人間永遠に騙すことはできる。多数の人間を一時騙すこともできる。」とも言っています。5年、10年と職場を共にした人なら明確であっても、数ヶ月(長くても1年)程度しか知り合えない学生さんが、どれだけ正確に捉えられるかは確かではありません。結果として、競争環境の中で生き残れない「いい人」と、生き残る「演じられる人」が生じることになります。とても残念なことです。しかし、病気になったとき、「人の良い藪医者」と「悪い名医」のどちらに行くかといえば後者です。一定期間、完全にだましきれるだけ演じられるならば、それは評価しなければならないと思います。また、家族として、友人としてつきあうのではないのですから、理解できない「いい人」は大学には無用の長物かもしれません。そうは分かっていても、具体的な人の顔がちらつくと納得できない、今日、このごろです。