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2009-06-09

[]保護者の方の戦略 22:03 保護者の方の戦略 - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - 保護者の方の戦略 - 西川純のメモ 保護者の方の戦略 - 西川純のメモ のブックマークコメント

 今、一般の保護者向けの本を書いています。保護者向けなのですから、保護者の方に読んでいただき、意見を頂きたいと思いました。そこで同志の一人に「お願い」しました。私としては頼みやすい数人の保護者にお願いしてくれるだろう、と思っていました。ところが、数十人の保護者の方が読んでいただいたのです。これにはビックリです。原稿用紙だったら二百枚以上の本の原稿を読んでいただき、コメントを頂く、こんなことをやっていただきました。コメントを読みながら、「よくぞ、ここまでお読みいただいた」と感謝の念でいっぱいです。それを、保護者の方から頂いたCDを聞きながら読んでいます。

 その中で、「保護者の方の力で『学び合い』を広げて欲しい」という部分があります。ところが複数の保護者の方から「無理!」というコメントを頂きました。そこで、それが無理ではないことを説明したいともいます。おそらく、これは教師にとっても、ありとあらゆる事に通じると思います。

 まず、「保護者の方が集まって教師や校長に直談判する」というのは無効です。そのあたりは本に書いたとおりです。おそらく「無理!」とコメントいただいた方は、そのようなことを想像していたと思われます。では、どうするか?

 実は『学び合い』の作法が有効です。多くの教師は「気になる子」がいます。大抵は、その子を何とかしようとして、ありとあらゆる事をします。でも、そんなことで何とか出来るならば、とっくのとうに何とか出来ます。しかし、出来ません。それと同じです。保護者の方にとって「気になる教師」がいます。既に、何らかの事はしたと思います。でも、駄目だったと思います。そして、「こりゃ無理だ」と思ったのだと思います。その通りです。おそらく無理でしょう。しかし、そこで諦めないで、本当に願ってください。

 『学び合い』では「その子」に拘らずに、クラスの問題として捉えます。そしてクラスを変えようとすると、その子が変えることが出来ます。何故かといえば、自分一人では「その子」を変えられなくても、クラスを変えることによって、クラスみんなで「その子」を変えようとするからです。

 自分の子どもの担任が「その子」である場合は、学校の問題として捉えてください。学校、特に、校長が「その子」である場合は、市や県の問題として捉えてください。そして、いろいろやってみるのです。「え!?、市や県・・・・」と思われるかもしれませんね。具体的に説明しましょう。

1) 周りの保護者に『学び合い』の良さを伝えてください。

例えば、『学び合い』を実践しているクラスの保護者に、『学び合い』の良さを伝えれば、そのクラスの担任がやりやすくなります。また、どの集団にでも中々『学び合い』を分からない先生はいますが、逆に言えば、直ぐに分かる先生もおられます。そういう先生が「やろう!」と踏ん切るきっかけになると思います。

2) 色々な人に伝えてください。

我々は色々な人に繋がっています。例えば、市や県の教育行政に影響力のある議員と繋がっているかもしれません。いや、保護者の中にいるかもしれません。その人が議会で質問してくれるかもしれません。マスコミ関係の人に繋がっているかもしれません。その人がきっかけで広く知られるようになるかもしれません。

3) 教師に伝えてください

例えば『学び合い』の会に参加して、「どうしようかな~・・・」と思っている教師に伝えてください。そういう人たちにとって、私より数倍説得力のある語りを保護者や子どもは出来るのです。全体に発表するばかりではありません。会のフリータイムにでも、悩んでいそうな教師をとっつかまえて話してください。

4) そして

そして、私には想像できない、何かをしてください。

 我々は『学び合い』が有効であるという学術データを積み上げました。現在、それによって『学び合い』に踏み切った先生が多いと思います。しかし、そういう人ばかりではありません。どんなジャンルにおいても、データで納得する人は一部です。多くは周りの人に影響されるのです。例えば、「点は位置があるが面積はない」ということだって、そんな馬鹿げたことを「定義がそうなら、そうしよう」と思える人は一部です。多くの人は、周りの人が、「そうなんだろうな~っと」思っていると「思っている」から納得しているのです。車を選ぶときだって、車の雑誌を何冊も読んで、それで何を買うかを決める人は一部です。多くの人は、周りの人に聞いてみたり、町でよく見かける車は何かを見ながら決めるはずです。『学び合い』を広げるには、「みんな」が大事です。そして、無理をせずに、出来るところから広げます。そうしているうちに、難攻不落の「その子」を何とか出来るのです。例えば、『学び合い』に疑問を持っている人も、その人が信頼する人たちが『学び合い』を実践するようになれば風向きが変わるのです。

 なんかいつ実現できるか分からなそうな道のように思うかもしれません。でも、多くの方が思っているほど時間はかかりません。だって、我々が本格的に学校現場に広げようとしたのは平成17年からです。新潟で最初の『学び合い』の会を開いたとき、参加者の数は、事務局を担当した西川ゼミの学生さんの数より少なかったのです。それからたった5年間しかたっていません。良いものは広がります。安心してください。そして「みんな」でやりましょう。

 同志各位へ『学び合い』は子どもや孫に安心を与えます。そして、自らの老後を保障するものだと、私は確信しています。素晴らしい世界を創りましょう!

[]変わらなきゃならないのは誰? 09:12 変わらなきゃならないのは誰? - 西川純のメモ を含むブックマーク はてなブックマーク - 変わらなきゃならないのは誰? - 西川純のメモ 変わらなきゃならないのは誰? - 西川純のメモ のブックマークコメント

 本にまだ書いていませんが、ゼミ生にはよく話す話です。

 今から十年ぐらい前、『学び合い』研究の初期段階に謎がありました。それは『学び合い』が成立するまでの時間なのです。

 西川ゼミに所属すると、私やゼミ生たちの洗脳を受けます。『学び合い』シンパの方であっても、門外不出のデータや話を聞けばびっくりでしょうね。その後、自らの実践です。自分の置籍校に戻って『学び合い』の実践をします。そこそこの『学び合い』が子どもが出来るようになるのが4週間程度です。不思議なのは、それは小学校でも、中学校でも同じだと言うことです。子どもと接する時間は、明らかに小学校の担任の方が多い。中学校の場合は、週に4時間程度です。ところが子どもが変わる時間は同じ、4週間程度なのです。なぜだか分かりますか?

 理由は4週間は、子どもの変わる時間ではなく、教師が変わる時間なんです。だから、小学校も中学校も変わりないのです。結局、教師が納得すれば、子どもは直ぐに変わります。それが証拠に、大学院1年の実践より、2年の実践の方が簡単に『学び合い』を成立させることができるし、それが現場に戻れば、もっと簡単に出来上がります。

 『学び合い』を成功させるためには、最初の語りが大事です。最初の語りは、子どもに語っている以上に自分に語りかけているのです。よく、荒れている学校では『学び合い』は出来ないのではないか?という疑問を持たれるか違います。まあ、気持ちは分かります。でも、そういう方は、授業がうまくいかない理由は子どもにあると考えているんですよね。でも、本当は教師の心が問題なんです。

 最近、地元の学校に『学び合い』の手ほどきに参りました。学校として『学び合い』を取り入れることを決意された学校で、2時間で4つのクラスの『学び合い』を見せていただきました。その中には、テレビドラマの「良いクラス」みたいなクラスもあります。逆に、子どもが荒れていて、先生が疲れている様子が見て取れるクラスもあります。私は後者のクラスの方がワクワクします。「こんなやんちゃな子どもたちが『学び合い』をすれば、どんな凄いことをやらかすのか」と思うとワクワクします。それに、後者のクラスで『学び合い』が出来るようになるのは当たり前だと私は確信していますが、多くの先生は後者のクラスで成立することに不安を持たれます。ということで、後者のクラスで成立したときの方がインパクトがある。ふぉふぉふぉ

追伸 こんな話は山ほどあります。それを聞きたければ上越教育大学大学院に入学して西川ゼミにおいで下さい。と宣伝をする。ふぉふぉふぉ