■ [大事なこと]自分にとって得
これからの時代、「面白い授業、分かりやすい授業」を追い求めていては自分の幸せは危ういと思います。理由はそれだったらネットの授業やAIのサービスに勝てないからです。
是非、ネット上に溢れている授業動画を一度視聴することを薦めます。
かなり力量がある教師が授業をしています。業者がフリーに公開している授業の場合、その教材作成はチームで作っています。
これだけでも凄いのですが、それだったら私の時代からあるNHK教育の番組と50歩100歩です。ネット授業の凄いのは、視聴したいと思っている人が見たい時間に視聴できるのです。そして、分からないことがあったらストップして、再度聞き直すことが出来ます。
さらに、さらに、様々な授業を選択することが出来るのです。今でも。
今、教員の大量退職の時代です。その中にはICTのリテラシーが高く、ユーチューブの動画アップも出来る人がいます。いや、時間があるのでそれを学ぶ人モデルでしょう。退職者の千人に一人でも自分の授業を記録し、アップし始めたら。想像して下さい。
それらの授業に年間を通して大多数の授業に勝てますか?
無理です。
今後はAIを駆使して、過去10年間の誤答分析によって適切にアドバイスできる無料のサービスが生まれるでしょう。更に言えば、AIがアバターを介して授業する時代だってくるでしょう。
さて、「面白い授業、分かりやすい授業」を追い求めている方々に問います。そんな時代がはいつ頃来ますか?来年ではないですね。しかし、あなたが退職するまで、来ないと思いますか?無理ですね。
では、その時代に生き残れる術は何でしょうか?
それはマーク・グラノヴェッターの言う弱い紐帯です。簡単に言えば、多様で多数の知人を持てるか否かです。
あなたが自分のクラスのことだけを考えていたら、他のクラスの教師が手をさしのべるでしょうか?
あなたが自分の学年のことだけを考えていたら、他の学年の教師が手をさしのべるでしょうか?
あなたが自分の学校のことだけど考えていたら、他の学校の教師が手をさしのべるでしょうか?
あなたが自分の都道府県のことだけど考えていたら、他の都道府県の教師が手をさしのべるでしょうか?
振り返って、もし、あなたが日本のことを考えていたら、他の都道府県の教師の中の日本のことを考えている教師はあなたに手をさしのべるでしょう。
そして、地域の人、企業の人も手をさしのべるでしょう。
一人一人の関係は弱い関係かも知れません。もしかしたら数年に1度合う程度かも知れません。いや、直に合ったことがない人かも知れません。しかし、その関係が多様で多数であるとき、その力は計り知れない。
子ども達の生きる時代は厳しい。でも、「2030年休止の仕事はこう変わる」で書いたように教師も厳しい時代を生き抜くのです。
西川ゼミの目標 https://bit.ly/2k5Slzr
■ [大事なこと]方法と考えの一致
『学び合い』は一つの願いと、二つの観によって構成されます。
まずは願いです。その願いとは、「子どもたちが一人も見捨てられない社会・教育を実現することによって一生涯の幸せ(つまり不幸でない)であることを実現する」ことです。
これを実現するには一人の教師では無理です。
一人一人の子どもは何を獲得したら幸せになるでしょうか?
それが学校観です。つまり「多様な人と折り合いをつけて自ら課題を解決することを学び、周りの人は同僚であることを実感する」ことです。これを獲得できる人は幸せになるでしょう。しかし、すべての人が自力で獲得できるわけではない。自力で解決できる人は多くはない。例えば学校レベルで言えば、自力で一定以上の課題を解決できるのは一部の子どもです。その他の子どもが獲得できない原因は多種多様です。そして、多くは膨大な対話が必要です。しかし、物理的に教師がすべてに対応できない。
だから子供観が必要です。つまり「子どもたちは有能である」と考えるのです。一人一人の子どもを別々に見れば能力はかなり低い。しかし、それらが有機的に結びついた「子どもたち」はかなり有能です。最も簡単な説明は、どんな子どもも1日は24時間です。つまり、クラスの子どもは一人の教師の三十倍の時間をかけられるのです。
以上から生まれて、洗練されたのが『学び合い』の授業方法です。つまり、願い、二つの観と完全に一対一対応するのです。
だから、『学び合い』と他の教育「方法」とブレンドすることは出来ないのです。
例えば、他の方法は、子どもたちの一生涯の幸せを実現するには何が必要か?と考えているでしょうか?おそらく、それらは楽しくて分かりやすい授業の実現を願っています。従って、それとブレンドすれば、その視野はその日の授業、最大でも3年の視野に限定され、子どもたちの一生涯の幸せを保証する能力の獲得が出来なくなるのです。
また、他の方法は子どもたちを有能と考えているでしょうか?有能と考えられなければ、いろいろの仕掛けを入れ込みます。教師が前にでます。そうなると子どもたちはそれに依存するようになるのです。結果として、教師はもっと何かをしなければならなくなり、さらに子どもは依存するようになります。結果として、もとの一斉指導に戻ってしまうのです。
カレーは美味しい。アイスクリームは美味しい。でも、カレーとアイスクリームを混ぜると美味しいとは言えない。おそらく、酷く不味くなります。
上記2点で見直してください。
もちろん、『学び合い』のテクニックは一斉指導においても有効です。もともと、一斉指導の名人教師から抽出したテクニックも多い。しかし、一斉指導に『学び合い』テクニックをブレンドしても、楽しくて分かりやすい授業は実現できても、子どもたちの一生涯の幸せは実現できない。(実は、それは教師である自分自身の一生涯の幸せも実現できないのです。)
定期的に書かねばならないことです。